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2004/06/01

■沈黙の春  

レイチェル・カーソンの「沈黙の春」はお読みになりましたか。
環境問題を最初に警告した本です。
日本では、私が会社に入った年に出版されましたが、
私が自称エコロジストを称えだすきっかけになった本です。
当時は「生と死の妙薬」という題で翻訳されました。
その題が私にはとても違和感があり、装丁の悪さも含めて、書棚には置きたくない本でした。出版社の新潮社のセンスを疑いました。こんな馬鹿げた書名にしなければ、きっともっと売れたはずです。そして社会に影響を与えたはずです。
10年ほどたって、書名が原題の「沈黙の春」に戻って、新潮文庫として出版されたので、ホッとした記憶があります。

レイチェル・カーソンは、最近は「センスオブワンダー」が有名で、その読書会も各地で行われています。
彼女は科学者ですが、沈黙の春の寓話のように、詩を感じさせることがあります。
彼女の作品のひとつ、「われらをめぐる海」には詩があると言われて、彼女は次のように答えています。
「海について真実を語ろうとすれば、詩にならざるを得なかったのです」
こうした彼女の姿勢が、私はとても好きです。

しかし、にもかかわらず、翻訳で読む彼女の作品はいずれも難解なのです。
それが気になっていたのですが、先日、科学技術倫理フォーラムの杉本さんから、「沈黙の春」の翻訳は技術者からするとわかりにくい。できれば改訳したいというお話を聞いて納得できました。真実をきちんと伝えないと、美しくはならないのです。

杉本さんから新潮社に打診してみるように頼まれたので、間接的に打診していたら、今日、連絡がありました。それによると、誤訳が多いという読者からの苦情があって、2001年に改訳をしたそうです。それも知りませんでした。早速新訳を読んでみようと、書店に行きましたが、残念ながらありませんでした。

杉本さんは、この本をしっかりした科学技術の素養を持った人が訳せば、もっと影響力を発揮できるだろうと考えています。
同感です。
そして、改めて、沈黙の春のメッセージをしっかりと受け止める動きを起こしたいものです。
ちなみに、米国では、1987年に「Silent Spring Revisited」という本が出ています。カーソンの問題提起を化学者たちが検証したものです。杉本さんは、技術士として、日本でもそうしたことを行いたいと、きっと考えているのでしょう。

ところで、今のところ、沈黙の春は避けられているようです。
鳥の声もよく聞けますし、花も昆虫も増えているような気もします。
しかし、本当に安心していていいのでしょうか。
いろいろと気になることの多い毎日です。

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