■問題の根源と情報社会の本質
またか、と思う報道です。
核燃料サイクル費用の比較が10年前に試算されていたにも関わらず、経済産業省や「有識者」は、その存在を否定していたというのです。
こうした「嘘をつく事件」は毎日のように報道されています。
前にCWSコモンズで、
「嘘の上に成り立つ社会のありように疑問を持ちましょう(2002/2/7)」というメッセージを書いたことがありますが、時代はますます「嘘つき時代」に向かっています。
社会における、ほとんどすべての問題の根源は情報基盤の違いにあります。
そして、その情報基盤の共有化を妨げるのが「嘘」の存在です。
つまり、嘘をつくことから、ほとんどすべての問題が始まるのです。
そして、嘘を見逃すことで瑣末な事件が大きくなっていくのです。
夫婦の離婚も三菱自動車の事件も、イラク事件も戦争も、です。
不幸なことは、情報基盤の違いが、経済利益や政治権力の源泉になることです。
そのために、故意に嘘をつく人が後を絶ちません。
その利権に群がって、嘘を見過ごす人も多いのです。
今、急速に進んでいる情報社会の最大の特徴は、情報共有化を促進することです。
つまり、嘘をつけない社会が、情報社会の本質です。
いまは、そこへの過渡期として、さまざまな事件が起きているわけです。
三菱や霞ヶ関のような大きな組織は、まだその本質を理解できていません。
朝日新聞によれば、
「(その)資料は、1994年2月4日に開かれた旧通産省の総合エネルギー調査会・原子力部会作業部会の非公式会合に提出された。
会議の議事要旨によると、通産省は試算の公表を提案したが、電力会社や研究開発期間の代表から〔中略〕(公表に対して)慎重発言が相次いだ。結局、こうした意見に配慮して試算の公表は見送られた。
ここから2つのことが読み取れます。
そうした部会のメンバーは、おそらくいわゆる「有識者」です。
そうした「有識者」は嘘をつく種族だということです。
実はその呼び方にすでに含意されているのですが、
自らが持っている「知識(情報)」を制度のために、つまり自己利益のために秘匿するという性向があるのです。情報を独占することで、自らのアイデンティティを守るのが「有識者」です。情報の共有を加速させようとする「内部告発者」とは反対の性向を持っています。
もうひとつは、会社の事情が最優先される経済優先社会の現実です。通産省は電力会社に勝てません。医師会に勝てない厚生省と同じです。要は、経済、つまりお金には勝てない構造になっているということです。結局は、それが会社や政府に損害を与えることは三菱自動車の事件やオゾン戦争事件で明らかですが、その時には誰かが利益を得られるのです。
知りながら情報を公表できない組織人の「霞が関官僚」の多くは辛い立場です。だから辞めてしまう人も少なくないのかもしれません。そういう状況にしてしまう、組織のあり方は問題です。組織の機密管理のあり方は問い直されなければいけません。
組織人ではない「有識者」はどうでしょうか。彼らの多くは、発言できるはずです。
知っていながら情報をみんなに知らせない「有識者」にはモラルというものがあるのでしょうか。
出生率の問題もそうですが、知っていながら情報を漏らさなかった人たちがたくさんいます。そうした人たちの名前を公表したらどうでしょう。組織を守った「勇気」ある人という捉え方もできます。責める必要はないかもしれません。
しかし、組織を超えて、もっと大きな組織のために情報をもらしてしまう「勇気」も、これからは必要です。
みなさんはどちらの「勇気」に拍手を送りますか。
またみなさんならどうしますか。
問題の根源は深いです。
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