■構造的暴力の被害者 カミロ兵卒の場合
一昨日のニュース23で、共和党大会のニュースに重ねて、カミロさんという若い米兵の事件が報道されていました。
彼は、大学の学費支援を受けるために入隊したのですが、イラクに派兵され、そこでの体験から、この戦争は違法であると考えるようになりました。そして、休暇帰国した際に行方をくらまし、1か月くらいしてから軍に出頭した若者です。結局、禁固1年の有罪になり、今、刑に服しています。その母親と支援者が、共和党大会会場の周りのデモに参加したのです。
彼は戦場で様々な体験をしています。
その話を母親との対話という形でビデオに残しています。
たとえばこんな話です。
仲間と街を巡回している時に、突然、街角から出てきたイラクの青年をみんなで射殺してしまったという体験談に対して、母親が『あなただけ撃たないこともできたのではないか』と質問していますが、彼は振り絞るような口調で、『そういうときは何も考えずに、みんなと一緒に撃ってしまうものだ』と答えています。
彼の場合、後で調べたら、11発も発砲していたと言います。彼を責められるでしょうか。
この話の構造は様々なことを考えさせてくれます。
なぜ彼がイラクにいったのか、人を殺さなければならなかったのか、そして刑に服すことの意味は何なのか。
結局、イラクで殺しあっている人たちの多くは、『やむを得ずにやっている』と言うことです。そして、結局は自らも殺しているのです。
ネパールからイラクに出稼ぎに行って殺された人たちも、イラクではなく、ヨルダンなどの隣国に行き、そこから強制的に派遣されたとも伝えられています。
問題は、そうした構造なのです。
ノルウェイのヨハン・ガルトゥングは、暴力には2種類あるといいました。
「直接的暴力」と「構造的暴力」です。構造的暴力の被害者が直接的暴力に強制的に組み込まれ、構造的暴力を強化させていく。これが昨今の平和活動の構造です。何が「イラクに平和」でしょうか。そんな思いの人たちと時代を共有する事がとても哀しいです。
カミロ事件のような報道が増えてきました。
戦争の実相が見えてきたと言ってもいいでしょう。いや、9.11の実相というべきかもしれません。
にもかかわらず、小泉人気はまた持ち直しそうだといいます。
悪貨は良貨を駆逐する。小賢しさが賢さを駆逐する。
最悪の人が組織のリーダになる、これは成熟した組織の避けられない宿命ですが、国家も同じです。
日米の北朝鮮化が進んでいます。
ガルトゥング風にいえば、構造的北朝鮮化が進んでいるのです。
ところで、最近のニュース23を、少し見直しています。
これまではあまりにひどかったですが、最近はきちんとしたメッセージを感じます。
テレビも少しは見る価値があるかもしれません。
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