■全国総合開発計画(全総)制度の廃止
「国土交通省は戦後の開発行政の指針となってきた全国総合開発計画(全総)を廃止する方針を固め、06年にも始める新たな国土利用計画の概要をまとめた」そして、「今後の社会資本の整備は、既存施設・設備の有効活用を掲げ、脱開発型に改める」と朝日新聞が報じています。
新たな国土利用計画なるものが、これまでの全総とどう違うのか、またそれを支える「有識者」たちはどういう人なのかをもう少し見極めないといけませんが、方向は歓迎します。
全体から考えていく時代は終わり、個々の現場や個人の生活から考えていく時代へと換わらなければならない時代になったという認識を持っている私は、「国土を利用する人たちのために」と言う統治者の視点ではなく、「生活を豊かにするために」という住民の視点で、社会や国土のビジョンは描かれなければいけないと考えます。もちろん生活を豊かにすることの根底には、宮澤賢治的な豊かな想像力が必要ですが。
自分の生活しか考えない「住民エゴ」に任せていたら、それこそ国土はめちゃくちゃになると反論する人がいるかもしれません。そういう人には、そういう判断から、自分の生活を離れて客観的に判断できる「有識者」や「専門家」に任せていた、現在の結果はどうですか、と問いただせばいいだけの話です。
生活から発想するということは、生活者こそが有識者で専門家であるということです。
しかし、都市計画マスタープランや地域福祉計画など、これからの行政計画は住民と一緒に創る方針が打ち出されていますが、寡聞にして、そうした主旨がきちんと守られた事例をほとんど知りません。今回はどうなるでしょうか。たとえば、NPOの広がりなど、社会状況の変化を踏まえた展開を期待したいです。
道路も新幹線も決して悪いわけではなく、公共施設も重要です。
しかし、それらが住民生活に立脚していればこそ、です。
昨今の政治議論は、ほとんどが問題の立て方を間違えていると私は思っています。
これからの社会資本(ソーシャル・キャピタル)は、開発とかそういう話ではなく、人と人との絆であり、信頼関係です。ものを壊す方向で豊かさを追求してきた発想を反転させなければいけません。
そういう理念がきちんと踏まえられているか、どういう人がこの方針を担っていくかが気になっています。しかし、これまでの全総に関わった人が絡まなければきっといい方向に動き出すでしょう。
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