■言葉の価値
最近、言葉について、何回か書いてきましたが、豊かな価値を持った言葉もあります。
私の住んでいる我孫子市に、デイヘルプというNPOがあります。
http://members.jcom.home.ne.jp/2125030801/
理事長の森谷良三さんはとても器用な方ですが、それを活かして、高齢者住宅での家庭内事故防止やバリヤフリー化、障害を持った人たちの自立促進を目指して、日曜大工の住宅改善ボランティア集団を1994年に立ち上げました。その頃、我が家も森谷さんたちにお世話になったことがあります。
ずっと地道な活動に取り組まれ、今ではメンバーも20人を超えています。すばらしいのは、人のつながりを大事にされていることです。
活動は、高齢者向けマンツーマン方式のパソコン教室など、広がってきていますが、原点にあるのは「自分たちの町は、自分たちの力で興そう」という姿勢と「人間共生」の理念です。
こう書いてしまうと理屈っぽくなりますが、要は、次の森谷さんの言葉のほうが正確でしょう。
「江戸っ子ってやつは、おせっかいなんだよ。困ってる人を見ると頼まれもしないのに手を貸してあげちゃう」
ちなみに森谷さんは、東京・八丁堀生まれで、もう80歳を超えているのです。
その森谷さんからメールが来ました。
ある要介護シニアの方が、玄関から道路に出る階段に手すりを付けたいと市役所に依頼したのですが、制度の中では対応してもらえませんでした。工務店に依頼すれば10万円はかかるのでデイヘルプに相談がありました。森谷さんたちは、7000円の材料費だけで手すりを付けてきたそうです。
そしてこうメールしてきました。
私は、こんな法律の隙間で泣く人を沢山見てきましたが、こんな人たちに手を貸すのが市民活動なのだろうか、と最近は疑問を感ずるようになりました。 それ以前に、こんな隙間を行政に直言し、改正させるのが市民活動としてやるべきだと思いますし、その上で、解決には官民協力して行く姿勢が必要なのかと思います。
10年以上も地道な活動をしてきた森谷さんの疑問と問題提起の言葉には、とても深いものがあります。そして、たくさんのヒントがあります。
「住民参加」や「住民と行政の協働」という流行語よりも、森谷さんのこの一言のほうが、よほど重いと思いますが、みなさんはどう思われるでしょうか。行政は、もっと現場の発言に対する感度を高めなければいけません。この言葉から、住民との関係の新しい地平が開けていくはずです。
言葉の価値は、発言者の人生に支えられているように思います。
そうした言葉が、少なくなってきています。
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