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2005/05/21

■2つの豊かさモデル 

10年前にフランスの社会学者ジャン・ボードリヤールが日本に来て、こう言ったそうです。
「日本が豊かなのは、日本人が貧しいからかもしれない」

豊かさの追求には、「全体が豊かになれば個人が豊かになる」というアプローチと「個人が豊かになれば全体が豊かになる」というアプローチがあります。日本は前者のモデルを選んで成功しました。しかし、そのモデルは15年前に破綻しました。組織から発想する時代は終わり、個人を起点にする時代が始まったのです。しかし、まだ社会は惰性で動いています。

東証1部の企業の昨年度の業績は3社に1社が過去最高の経常利益を上げたと今朝の新聞で報道されています。全体で見ても、3期連続の増収増益です。
景気が回復しない、失業者が増えている、働き口が見つからない、などという社会状況から見るとどうもピントこない話ですが、組織起点の発想では、会社の業績と社員の所得がトレードオフになっていますから、当然の帰結なのです。
このモデルでの発想を捨てなければいけません。両者をトレードオフにしてはいけないのです。
なぜいけないかというと、組織の利益とは、実は組織に寄生する一部の人の利益だからです。つまり、組織発想とは、利益配分の実態を見えなくしてしまう仕組みにつながっていくのです。社会保険庁の実態を考えれば少し理解してもらえるかもしれません。その気になれば、すぐにでも変えられるはずなのに、政治家はいっこうに変える気がありません。彼らもまた寄生側にいるからです。
組織とは、小さな差異を増幅する仕組みの要素をもっています。リーダーによって組織は全く逆な働きをします。個人の視点がないリーダーが引率する組織は、個人を犠牲にして組織利益を優先させ、残った寄生族を懐柔し、仲間にしていきます。そうした企業の発想が、結局は自らを貧しくしていくように思います。

企業変革、経営改革などが話題になりますが、こうした本質的な問題はいつも議論にはあがりません。それはほとんどの場合、企業という組織に寄生している人たちが考えているからです。企業という組織の実体を支えている現場の人たちは、全体が見えないために変革の主役にはなりにくいのです。

その状況が次第に変わりつつあることも感じていますが、
もうしばらくは組織優位の状況は続きそうです。

ジャン・ボードリヤールの言葉を改めて噛みしめてみたいです。

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