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2005/06/04

■郵政民営化よりも銀行国営化 

昨日の郵政民営化特別委員会の議論を聞いていて、やはり問題は「民営化」コンプレックスにあるという思いを強めました。
非効率さと硬直性、そして不透明性が、国営の欠陥で、だから民営化待望論が広がり、国鉄や電電公社の民営化の成果(落とし穴を感じますが)によって、民営化はいいものだということになったのでしょうが、この論理はいかにも安直です。
非効率や硬直性、不透明性は、民営であろうと国営であろうと起こりえますし、それはまったく別の問題です。議論のポイントはガバナンスの問題です。

郵政は国民の負担と考えるのは、国営事業がすべてコストセンターだと考えるからです。しかし、郵政システムを国民の利益と考えれば、プロフィットセンター的な発想が可能になります。
郵政でもし利益を上げられるとしたら、その利益は民営化の場合は、特定の資本家のものになります。国営のまま利益が上げられれば、それは国民みんなのものになります。言いかえれば、税金が削減できるのです。
その基本的な努力を放棄して、誰かに売ってしまおうと言う発想が現在の民営化論の根底にあります、閣僚や官僚は形だけを整えて、うまく責任を外してしまいたいと思っているようにしか見えません。事業価値論(ミッション論)ではなく、組織形態論(手段論)になっているわけです。昨日の委員会の議論では、閣僚側にはまじめさが皆無でした。報道ステーションの古館さんも言っていましたが、まじめさが欠けています。

私はむしろ、今の金融システムにこそ問題を感じていますので、金融はすべて国営化すべきだと思っています。高い金利での融資はなくすべきで、融資はすべて国が所管すべきだと思います。銀行は私営化すべきではありません。国が通貨を作っているわけですから、その運営も国がやるべきです。それを市場主義者にゆだねて、不労所得を発生させ、その利益の分与を一部の人たちが巧妙に受けている、今の構造には納得が行きません。

ところで、国営化、民営化という言葉の意味なのですが、現在の意味は逆転していると私は思っています。
国営化は、本来は国民に統治権があるはずです。もしそうであれば、統治対象である「民」が主役になるはずで、国営化とは実は民営化のことになるはずです。今の民営化は私営化でしかありません。つまり、言葉の魔術に私たちはだまされているのです。
金融と言う社会を支える基本的な信頼ステムは、当事者みんなのもの(コモンズ)にしなければいけないと、私は思っています。そのモデルは、地域通貨の中にあると思いますが、このガバナンスのあり方をビジョンにすべきです。
したがって、実は国営化ではなく、共営化というのが正確です。それに向けての第一歩として、まずは銀行を国営化し、次に金融システムそのものを共営化していくべきだと思います。以前も書きましたが、郵政民営化は、歴史の方向が逆なのです。

リアリティがないと言われそうですが、今の金融システムは砂上の楼閣ですし、さらに極端にいえば、犯罪の温床でしかないと、私は思っています。少なくとも高利融資を厳罰に処すことで、政治家や銀行経営者などは身の潔白を証明してほしいものです。

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コメント

「郵政法案審議正常化その後」でトラックバックされて、そこから、やってきました。
金を右から左に動かして一部の人間が巨利を得て、それが決して国民全体の利益に通じない、そんな仕組みに違和感を感じておりました。思わず、過去ログも拝見させてもらいました。

投稿: おやじの独り言 | 2005/06/04 21:37

「おやじの独り言」さん
ありがとうございます。

同感です。
にもかかわらず、民営化ということがなにやら錦の御旗になっていること、それを国民の多くが無批判に受容していることに、大きな不安を感じています。

最近はこのブログも、なかなか書くモチベーションを持続できないのですが、少し元気になりました。
ありがとうございました。

投稿: 佐藤修 | 2005/06/05 06:53

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