■ライブドア事件から感ずる時代の危うさ
ライブドア事件は自殺者まで出してしまいました。
残念な話です。
問題解決を個人的にするのか、社会的にするのかで、スタイルは全く変わってきますが、最近の事件の当事者のほとんどは、個人的に解決してしまう傾向が強いのが気になります。
自殺は典型的な個人的解決策ですが、社会的に考えれば、それは問題の解決ではなく問題の深まりの始まりになります。
実に残念なことですが。
ところで、ホリエモンは時代の落とし子であり、時代の象徴です。
時代が彼のような人間とそのビジネスを生み出し、一時は称賛したのです。
私も彼の行動に拍手を送ったこともあります。
その不明さを恥じるまでには、そう時間はかかりませんでしたが、ある意味では時代に翻弄された若者だったのかもしれません。それは同時に私たちもまた翻弄されたということですが。
あえて過去形にしていますが、これから彼の主体性が芽生えるかもしれないと少し思っているからです。
子どもたちに株式投資の教室を開いたというニュースがテレビで好意的に取り上げられていたのはつい10日ほど前までの話です。
少し前にフレキシビリティに言及しましたが、今は社会にも個人にも、核となる価値観がないのかもしれません。
25年ほど前に「価値観の多様化」という言葉が流行ったことがあります。
当時、私は「多様化」ではなく「価値観の喪失」と言っていましたが、まさにその方向で時代は定着しつつあるような気がします。
今回のライブドアの事件はそうした中で複雑な構造を持っているように思います。
つまりホリエモンを否定することが多くの人にとって自らにつながるのではないかと思います。
耐震偽装事件にもたぶん共通していることです。
確証もなく、こんなことを言うのは軽率ですが、多かれ少なかれ、自らとつながる「不正の部分」を感じている人は少なくないような気がします。
感じていない人も多いと思いますが、全く別の世界にいるかと問われて、きっぱりとイエスと答えられる人は少ないでしょう。
いい加減な建築、いい加減な有価証券報告書、いい加減な評価体制。
最近話題になる社会問題や経済問題は、私には氷山の一角にしか思えません。
その気になれば、程度は小さいでしょうが、類似の事件は幾つでも見つかるように思います。
みんな「見ない振り」をしているだけかもしれません。
その根幹を正すことがもっと真剣に考えられるべきでしょう。
方法はそう難しい話ではないようにも思います。
ただ、それで困る人が多すぎるのが問題なのでしょう。
額に汗して、しっかりと自らを生きている人は決して困らないはずですが。
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コメント
ライブドア事件、長銀事件に似てると思いました。数日で株価が急落、自殺者が出た。。。などの点です。ライブドアの株価下落は検察がきっかけを作りましたが、4日間で半減など、先物でもうけるチャンスです。長銀のときは、投資銀行が、このやり方で大もうけしたそうですが、今度もやってるんでしょう。マネー経済は、まだ隆々と活きてるんです。
長銀のときは、数人自殺しました。きのどくだと思いましたが、あぁ、そうか、やっぱりという感じもし、複雑です。ライブドアは、若い人が経営にたずさわっており、苦闘対抗力が十分ないのではと心配です。年寄りが出てきて、支えてあげなくてはいけませんが、そんな気配がないのがいけません。
いやな事件です。
投稿: machida | 2006/01/21 10:10
町田さん
ありがとうございます。
本当にいやな事件です。
お金はともかく、誰が得をしているのでしょうか。
耐震偽装事件もそうですが、誰が得をしているのが最近は良く見えないのが気になります。
小嶋社長や堀江社長の儲けなどは大した儲けではないような気がしますが、もっと大きな儲けを得ている人がいるのでしょうね。
投稿: 佐藤修 | 2006/01/21 12:09
こんにちは。
昨日は、千葉県のNPO活動発表会でした。
http://happyou.seesaa.net/
僕たちの周りは、いまちょっとした10代20代ブームです。
20代のNPOスタッフがめきめきと頭角を現しています。それぞれの人が、さらに年下の人を何人も抱えていて、人材育成(!)に取り組んでいます。
そんなNPOには、10代の学生がインターン希望で集まってきています。その人たちも、肩肘張らずに、いろいろな人との出会いをとても楽しんでいる様子です。
ライブドア事件は、会社側も、それを非難する人もどちらも胡散臭いのが特徴ですね。あの事件に反応する人は、なんか信用できない感じ・・・。
2つの世界があまりにも違うので、面白いです。
投稿: shimoyama | 2006/01/23 22:13
shimoyamaさん
ありがとうございます。
>ライブドア事件は、会社側も、それを非難する人もどちらも胡散臭いのが特徴ですね。
同感です。それにしても、見事にテレビの編集方針が変わり、キャスターの発言のニュアンスが反転しました。「フレキシブル」な時代は便利です。
ところで、「2つの世界」に加えて3つ目の世界はどうなっているのでしょうか。お金だけを追いかける世界とそれに背を向けて元気に自らを生きている世界のほかに、そのいずれにも参加せずにいる人たちがいますね。
もしかしたら、彼らこそが新しい時代の旗手かもしれないと思いたくなっています。
一度、是非そのあたりの話を聞かせてください。
投稿: 佐藤修 | 2006/01/24 09:02
佐藤様
3つ目の世界。
それは「羅生門」なのか、「楢山節考」なのか、どちらでもないのか。
自尊心を奪われた世界。
社会に併せて自らの命も“間引く”世界。
↑とかいうテンパッたかんじでもなく、みんな掘っ立て小屋に住んで、その日暮しをする人が人口の大半を占めるような社会に日本はなっていくのかなぁ、などと思います。
投稿: shimoyama | 2006/01/24 23:07