■歯がなければ歯は痛くならない
NHKのにんげんドキュメント「人も長持ち モノも長持ち~93歳 現役社長の経営術」を見ました。昨年5月に放映されたものの再放送です。
主役は知立市の町工場社長の成瀬博さんです。
自動車会社の下請けをしていましたが、仕事よりも金を優先させた発注態度や仕事をやらせてやるという姿勢に反発して下請けを辞めて独自路線の町工場に転じた経営者です。
成瀬さんの信条は「金よりも仕事が上」です。
仕事を頼んでいた企業が不渡りをつかまされて倒産の危機に直面した時には、理由を一切聞かずに、その社長に資金支援したエピソードも紹介されましたが、その会社の経営者もいまは身の丈にあった家族企業に転じました。
その社長が、「家族のために働く」実感を持てるようになったと話していたのが印象的でした。
誰のために働くかは、とても重要な問題ですが、往々にしてあまり考えられていないように思います。
もしそれが明確であれば、無限に働くことはなくなるでしょう。
収入もきっと限度があるはずです。
成瀬さんにとっては「金よりも仕事が上」ですが、昨今は金を獲得することが仕事だという風潮が広がっています。
仕事と金は別の次元の話だと思います。
成瀬さんのお弁当を食べる場面がありました。
見ているとあごでゆっくりと噛んでいます。
歯が無さそうです。そう思っていたら、驚くべき発言がありました。
歯が悪くなるといけないので、歯は全部抜いたというのです。
ちょっと表現は不正確かもしれませんが。
歯が無ければ歯痛で辛い思いをすることもありません。
感心しました。元を正せばいいのです。
成瀬さんは毎日3種類の新聞を丁寧に読んで、それを1枚ずつしっかりと4つに折って、3日分を紙テープでまとめます。
この地域では、学校の生徒が古新聞の回収に来るのだそうですが、その生徒たちが集めやすいようにし、また回収作業が効率的に進むように、毎日ちょっとの時間と労力を割いているのです。
きっと成瀬さんの会社や工場ではごみも出ないように思いました。
成瀬さんの会社で働いている社員は幸せですね。
取引先の社員も幸せでしょう。
それに成瀬さんの会社で使われる資材や機械もきっと効果的に使われていることでしょう。
今でもこういう会社があるのですね。
日本の企業が復権する希望は大いにあります。
私は「経営とは愛すること」という考えを持っています。
なかなか理解してもらえませんが、今の企業に必要なのは「愛」ではないかと思います。
とてもいい番組でした。
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コメント
ご紹介の番組、昨年度放送の時に見ました。
成瀬さんのような方がおられるのはとてもうれしいです。存じ上げないのに、何だか自慢したいような方です。
でもこれからの世代の人たちの中に、成瀬さんのような生き方、考え方が育っていくことがあるのでしょうか。
例えば新聞紙でも、私の親はビシッと折り重ねていましたが私は適当です。子は更に適当です。
こんな小さなことでも気をつけよう、と改めて思いました。忙しいからと、気持ちを入れずにないがしろにしていることが多すぎます。
かといって、何か大切なことをしているわけでもないのですから。
それから余談ですが・・・歯は抜いてはいけません。母は「抜いた方が楽」と口腔外科に勧められ50代の時に総入れ歯にしてず~と後悔していました。できるだけ残した方がいいと思います。
投稿: hana | 2006/01/03 23:09
hanaさん
いつもありがとうございます。
見ていてくれた人がいて、とてもうれしいです。
あのテレビを見たおかげで、私は昨日はとても幸せな気分でした。
>でもこれからの世代の人たちの中に、成瀬さんのような生き方、考え方が育っていくことがあるのでしょうか。
不安がありますね、でもだからこそ、そうなるように私たちが自分の生き方を見直していくことが必要なのでしょうね。
>こんな小さなことでも気をつけよう、と改めて思いました。
そう思います。
余談のところですが、同感です。
私が今かかっている歯医者さんはとにかく大事にしろといいます。
親知らず歯も大事な資源だと教えられました。
http://cws-osamu.cocolog-nifty.com/cws_private/2004/06/post_1.html
投稿: 佐藤修 | 2006/01/04 09:47