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2006/02/01

■「消耗品戦略」と環境経営、あるいはCSR

今日のasahi.comのビジネス面に、『「消耗品戦略」の危機回避 キヤノン逆転勝訴』という見出しで、プリンターのインクカートリッジのリサイクル品をめぐる高裁判決が報道されています。ちなみに朝日新聞の記事の見出しは、「キヤノン逆転勝訴」だけです。
できるだけ事実報道にとどめるか、メッセージ性を高めるかは重要な問題です。
記事の内容はそう変わらないのですが、見出しのつけ方で印象は全く変わります。
前者の見出しをつけた人は、企業の、あるいは産業界の「消耗品戦略」に好意的な姿勢を持っているのでしょう。意識しているかどうかは別として。
見出しで印象は一変します。
新聞にとって一番重要なのは見出しのつけ方だと思います。
もちろん現場取材を前提としての話ですが。
同じ事件をどう扱うかで、その新聞の姿勢が良くわかります。
それに、見出しの持つサブリミナルな効果はとても大きいはずです。
世論さえ変えてしまいます。
藤原正彦さんは話題の近著「国家の品格」で、マスコミは三権分立されている立法、行政、司法の上に君臨する第一の権力だと書いていますが、同感です。
つまり変な言い方ですが、国家さえも「民営化」されてしまっているのです。
国家の民営化の話はもう少しきちんと書かないと伝わらないかもしれませんが、そもそも民営化とは資本に人間を売るということです。
郵政民営化に私が反対するのはそのためです。
得をするのは決して国民ではありません。
これは政財学連合による詐欺のような話なのです。
それはそれとして、
この訴訟です。
プリンター用の使用済みインクカートリッジにインクを再注入して販売していた会社をキャノンは特許権侵害に当たるとして訴えていたのです。第一審ではキャノンは敗訴しましたが、今回はキャノンが勝訴し、販売禁止とリサイクル品の廃棄を命じられたのです。
この事件も実にさまざまな問題を含意しています。
大企業の利益の上げ方は決してホリエモンの知恵に負けません。
私はキャノンという会社が大好きです。
昔、テレビの番組で賀来会長(当事)をインタビューさせてもらったことがあります(12回の経営者インタビューの番組を引き受けたことがあるのです)。
賀来さんの真摯な姿勢に感銘を受けました。
社会問題や環境問題への取り組みにも共感することが多かったです。
そのキャノンにしても、こうした対応になるのがどうも残念です。
どこが残念かといえば、会社の利益を守るというところから発想されているからです。
asahi.comの見出しの付け方は論外としても、キャノンの人もまたどこかでそういう意識を持っていることは間違いないでしょう。
問題は今のビジネスのやり方なのです。
「消耗品戦略」というものが、いかに環境経営やCSRに反するかを考えてほしいものです。
そして社会の視点に立って、販売会社と一緒になって事業スキームを再構築してもらいたいです。
大切なのは企業の利益ではありません。社会にとっての価値です。そしてそれが企業の利益になるのです。順序を間違ってはいけません。
賀来さんがご存命であれば、こんなことにはならなかったような気がします。
キャノンにとっては自らの「消耗品戦略」を見直す絶好のチャンスのはずなのですが。

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