■コストダウンからコストアップへの戦略転換
またまた悲惨な交通事故が起きました。福岡市で飲酒運転していた車に追突され、川に墜落、若い両親が3人の子どもたちを一挙に失った事故です。
これは事故ではなく、犯罪事件というべきで、明らかに防止策がもっととられてもいい事件です。
こうした事件に対する処罰は、最近、重くなったとはいえ、まだまだ極めて軽いです。最高でも20年以下の懲役ですから、被害者の家族は決して納得できないでしょう。
日本の刑法は、その前提において、かつての冤罪や警察の横暴さを前提にした被害者保護の視点が強いように思います。そろそろ発想を転換すべきです。
それに、産業優先の行政措置も見直すべきでしょう。
飲酒運転をした人は運転免許を永久に剥奪すべきだと私は思います。
自動車の危険性を少しでもわかっていたら、そんなことは当然だと私は思います。
それで何か不都合が生まれるでしょうか。
自動車市場が少し小さくなって、アルコール飲料の売上げが少し減るだけのことでしょう。
自動車メーカーとアルコールメーカーは賛成しないかもしれません。
でも、その経営者も、自分の家族が被害者になれば、考えは変わるでしょう。
人間は自分が当事者にならなければ、真剣に考えないという傾向がありますが、当事者になれば真剣に考えるものですから。真剣に考えれば、答は簡単です。
しかし、今回、問題にしたいのは別の話です。
今回の事件で私が感じたいのは、やはり自動車の価格が安すぎることです。
重量あたりで言えば、リンゴや梨と自動車は同じくらいの価格ですが、果物は食べれば無くなるのに自動車はずっと使えるわけですから、実は重量あたり価格はリンゴに比べて桁違いに安いのです。
にもかかわらず、自動車メーカーは今なお空前の利益を上げています。
それはスケールメリットのおかげですが、自動車はおもちゃではなく、走る凶器でもあるわけですから、誰でも買えるような価格設定でいいのでしょうか。
かつて「自動車の社会的費用」が問題になったように、コスト設定と商品が発生させる社会的損失評価に間違いがあるのだと私は思っています。
そうしたことを考えると、自動車メーカーは価格を上げると同時に、少なくとも利益のかなりの部分をそうした社会的補填ないしは予防に割くべきです。
いや、自動車のコストをもっと高めるための仕組みが必要なのです。
トヨタはコストダウンは得意ですが、コストアップは不得手かもしれませんが、これから必要なのはコストアップの思想と利益配分の思想です。
たとえば飲酒運転防止などの仕組みの研究開発が進められていますが、それをもっと加速し、そのコストを価格に反映させることも良いでしょう。
交通事故発生予防の社会的仕組みづくりにももっと資金投入すべきですし、交通事件にあった被害者救済にもっと資金を割くべきでしょう。それらをコストに組み込めばコストは上げられるのです。
奇妙な論理だと思われるかもしれませんが、そろそろコスト発想の枠組みを変えるべき時期に来ているのです。
目先のコストダウンは、実は長期的なコストアップにつながっています。
そしてその逆もまた真なのです。
日本の企業は、そろそろコストダウン発想からコストアップ発想へと進化すべき時期ではないかと思います。
先日書いた住宅も、まさにそれが緊急の課題です。
まずは自分の生活から変えても良いかもしれません。
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