■薬害C型肝炎訴訟に見る政府や企業の発想
C型肝炎訴訟では2番目の判決になる、福岡判決が出ました。
大阪地裁での判決と同じく、国と製薬会社に賠償支払いが言い渡されました。
この問題は日本の行政の本質を象徴しているだけではなく、企業の本質を象徴している事件なので、私にはとても関心があり、これまでも何回か書いてきました。
大阪地裁の判決時にも書きました。
今回も原告勝訴とはいえ、何かすっきりしないものがあります。
原告の一部の請求を棄却したというのもそうですが、
こうした事件を教訓にして、政府や企業が自らの考えを問い直している姿勢があまり見えてこないからです。
J&Jは、タイレノール事件で自らの企業のあり方を変えたといわれています。
日本では、こうした事件が起きても、企業のあり方を変えようという動きが出てきません。
訴訟で争うのも必要かもしれませんが、
まずは被害者救済に全力を尽くすとか、再発防止のための企業の仕組みを見直すとかするべきではないでしょうか。
ところが、企業や国の対応は、企業防衛、賠償額節約、つまりは責任回避が先行しているように思えてなりません。
発想の起点が違います。組織起点なのです。
それではせっかくの事件が活かされません。
個人の問題に矮小化され、当事者双方にとってもむなしい結果になりがちです。
しかも本質的なことは解決されませんので、類似の事件が繰り返されているわけです。
個々の問題解決と同時に、そうした事件の再発を回避する対策が重要です。
それが結局は企業にとっても国にとっても、大きなメリットになるはずです。
裁判や訴訟の増加が増えていますが、
かつての大岡裁きのような「三方得」発想のしくみはできないものでしょうか。
裁判で決着をつける方法は、最後の手段のように思いますが、
三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)や厚生労働省がもしもこの事件を謙虚に考え直していれば、もっと違った対応になるはずです。
もしかしたら裁判への対応の半分の費用とエネルギーでそれが実現できるかもしれません。
いつもこうした事件に触れて思うのは、
もしそれぞれが自らの立場を相手に置き換えて考えたらどうなるかということです。
特に三菱ウェルファーマや厚生労働省の意思決定者に聞いてみたいと思います。
争いが生じた時に、まずは立場を置き換えて考える時間があれば、
世の中の争いはかなり減少するような気がします。
せっかくの「フィブリノゲン事件」も、企業の進化には役に立たなかったことが残念です。
| 固定リンク
「医療時評」カテゴリの記事
- ■個人判断してはいけない時代だったことに気づきませんでした(2023.01.27)
- ■プルトニウム注射とワクチン注射(2022.12.05)
- ■退院後の自宅養生で考えたこと(2022.11.10)
- ■入院して改めて感じた医療のあり方(2022.11.09)
- ■宮庄さんの新著「新型コロナ真相 謎とき紙芝居」のお勧め(2022.03.30)
コメント
ミドリ十字、は、731部隊のOBが朝鮮戦争で儲けようとして作った会社で、日本の医学会や厚生省のひとたちは旧731部隊のひとたちの弟子から成り立っているという話があり、企業体を巡る問題だけでない、日本の医療界のとんでもない闇を抱えているというはなしがあります。
投稿: 宮崎 | 2006/09/01 00:37
宮崎さん
ありがとうございます。
731部隊は究明されそうになるといつもどこかでストップがかかったようにあいまいになりますね。
まだまだ見えないことが多すぎますね。
投稿: 佐藤修 | 2006/09/07 09:34