■商品は文化とセットです
私にはどうも好きになれない商品がいくつかあります。
古いところではウォークマンです。
i-pod につながるイヤホンで音楽などを聴く機器です。
最初に出たときには、ハインラインの「人形つかい」の世界を思い出してゾッとしました。
企業にはしっかりしたビジョンと哲学が必要だと思いました。
ウォークマンの発売以来、私の中でのソニーの評価は大幅に下がりました。
ウォークマン開発に関わった友人もいたのですが。
ウォークマンを聴きすぎると難聴になるとも言われていますが、
もっと恐ろしいのは社会的難聴、つまり周辺のことに関心を持たない社会的姿勢の習慣化がおそろしいです。
ウォークマン登場以来、電車内の風景は変わりました。
せっかく社会には素晴らしい音がたくさんなります。それを遮断してしまうのは、もったいない話です。
ソニーの経営者はそれを少しは考えたのでしょうか。
こうして「つながりこわし」の商品は市場を次々と創りだしました。
文化を創ったのか壊したのか、人によって評価は違うでしょうが、
私には井深さんの思想とは反対の方向にソニーが向いてしまったように思いました。
ビールをはじめとしたアルコール飲料も嫌いな商品です。
アルコールに弱く、下戸であることが影響しているかもしれませんが、
タバコ以上に社会に害悪を与える商品だと思っています。
酒を飲めないとは人生の喜びの半分を捨てているようなものだとよく言われました。
そういう人にとっては、アルコール飲料反対などは論外でしょう。
アメリカの禁酒法時代を思い出せば、禁酒は人間の生理に反するといわれるかもしれません。
しかし時代は変わりました。
人間の理性をおかしくするような飲み物がこれほど大手をふって市場を拡大しているのは理解できません。
飲酒運転による交通事故の責任の一半は酒を製造販売している会社が負うべきです。
その意識がほとんどなく、売らんかなばかりの広告に罪の意識のない経営者の常識を疑います。
一時期、ビールに関してもそうした議論が出始めたことがありましたが、最近はほとんど聞いたことがありません。
なぜこんなことを書き出したかといえば、一昨日、テレビで、水上バイクの事件の特集を観たからです。
それが気になって仕方がありません。
海水浴場に突っ込んで水泳客を殺傷する事故が増えているようです。
しかも高校生の生命を奪ったドライバーの罪は2年半の懲役です。
被害者の家族は納得できないでしょうね。私なら報復も考えかねません。
こんな危険な商品を製造販売し、2日間6万円で運転免許を与えるような教習所を運営している会社は、私には犯罪行為としか考えられません。
その延長で言えば、自動車メーカーもそうなってしまうわけですが。
水上バイクは製造禁止、アルコール飲料も販売禁止、などと言ったらそれこそ総スカンでしょうね。
趣味のない変人のたわごとになってしまいます。
問題は、商品は「もの」ではないということなのです。
商品を世に出すことは、文化を創ることです。
ですからその使い方や使われ方を一緒に設計し提案すべきなのです。
水上バイクもいいでしょう。だが一般の空間ではなく、競艇場のような隔離された使用場所をつくるとか、人の来ない沖合いに自由に運行できる領域を作れば問題は解決します。
それを作り出すコストも商品には入れるべきでしょう。
ビールやお酒もそうです。
その効用もあるでしょうから、酒をたしなむ文化や場所をもっときちんとつくるとともに、飲酒による事件や事故に対するしっかりした対策をメーカーとしても用意すべきです。
飲酒運転に対しては厳罰にする運動はそもそも酒やビールの会社、あるいは自動車会社が起こすべきです。
それはCSRとか社会貢献などという以前のことです。
それが出来ない会社のCSRなど信頼できるはずがありません。
ウォークマンはどうでしょうか。
これも使い方の文化がもっと考えられるべきでした。
新商品の開発には経済だけではなく文化の視点が不可欠です。
発想を変えることが必要になってきたと思います。
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コメント
ゴルバチョフ時代に禁酒法を制定して、消毒用アルコールや化粧品をそのままのんだりして数十万人規模で死者が出て、天下の悪法だったという話がありましたが、裏経済と表経済の差みたいにそう簡単にいかない問題だろうと。
モラルだけで責めると地下化するだけですから、取締自体が無駄になりかねません。
場合によっては、役に立たないにも関わらず存在する建前だけの役職をつくりだしかねません。
投稿: 田端 | 2006/09/11 00:15