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2006/09/17

■飲酒運転事故(事件)の実態が誰にも見える仕組みづくり

福岡での飲酒運転事件以後、テレビでは連日、飲酒運転による事故の報道があります。
この事件によって、まさか飲酒運転が増えたわけではないでしょうから、以前から毎日のように飲酒運転による事故が発生したことは間違いありません。
むしろこれだけ飲酒運転への目が厳しくなっていますから、むしろ現在以上に多かったと考えてもおかしくありません。
これまではあまり飲酒運転に社会の目が向けられていなかったために、多くの飲酒運転事故が発生していたにもかかわらず、あまり見えていなかっただけの話です。

このことは社会の実相を把握する上で、大きな示唆を与えています。
私たちは、マスコミによってつくられた社会を現実だと考えているということです。
つい最近も「子どもの事件」に関して、コメントももらいましたが、
子どもが加害者になる事件が、今の日本で増えているのか減っているのか、実はおそらく誰にもわかりません。
私の自治会の中での話であれば、私にもほぼ正確に把握できますが、社会全体は見えないのです。

統計があるといわれるかもしれませんが、統計はいかようにも編集できます。
統計が現実を正確に映し出すことはまずありません。
仕事で30年以上、マーケットリサーチや意識調査を扱ってきた者としては、統計データはちょっとした仕掛けでかなり編集できると思っています。
人口統計のように変えにくいものもありますが、それでもかなりの編集は可能です。
ちなみにかつてある政令都市では人口100万人を切らないような苦労していましたが、当の役所の中にすら実際は100万人を切っていると発言している人が複数いました。まあ、それはそう難しい話ではないでしょう。

人口統計でもそうですから、解釈の要素が入るものに関してはもっと大きく変わることが普通です。
たとえ同じ風景を見ても、見る人や見る目的によって、全く違う意味を持つことは誰もが体験することです。
私たちが見ている社会は、必ずしも現実の社会とは同一ではありません。

マスコミは、その時々の流行や事件で社会の見え方を変えていきます。
それによって、法律がうまれ、計画がつくられ、予算配分が変わってくるのはある程度仕方がないとしても、そのことをいつも頭に入れておく必要があります。

ある委員会で、ある官僚の人が、「いまは再チャレンジという言葉があると予算は取りやすい」と冗談ぽく話しましたが、それが頭から離れません。
笑い話のようですが、よく考えられると今の政府の基本姿勢を象徴しています。

飲酒運転や高金利は現在はマスコミの注目を受けていますが、一時的な流行に終わらせないようにしたいものです。
飲酒運転防止に向けて、漸く自動車メーカーも動き出したようですが、酒造業界も動いてほしいものです。そして飲酒事故の実態が常時誰にも見えるような仕組みをつくってほしいです。それこそがそうした業界に関わる企業の経営責任だと思います。
どこの経営者もまだ発言していませんが、彼らの家族が被害者にならないと動き出さないなどとは思いたくありません。

それにしても経団連の奥田さんが何も発言していないのが、残念でなりません。
形だけでもいいですから、ほんの少しだけでもCSR意識を持ってほしいものです。

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コメント

 自分が当事者ではない事件・事故は基本的に二次情報だということがあると思うんです。その場合加害者・被害者双方の立場に立てるというメリットがありますが、実際には己が加害者になりうる推定は無視されて、悪者を処罰する魔女狩りのようになり、検察もそうしたメディアリンチの流行を利用して捕まえたりしています。
 何か生贄の犠牲を出して溜飲を下げて終りなので、原始的な呪術社会を見ているような気がします
 どのような二次情報も自分の実感に基づいて判断するしかないですが、例えば子供による残虐な事件は昭和・大正どころか大昔にもあったように記憶しています。

 理解できない不幸な事件とはあるものですが、牽強付会も考え物ですし、そもそも自分がその事件に関わる必然性がない事件が大半かも知れない。関心を持つように仕向けられているだけで、それも視聴率や部数を上げるための感情操作のような気がします。

投稿: 田端 | 2006/09/17 07:18

田端さん
ありがとうございます。

たしかに、マスコミはいまや「権力」や「ビジネス」に利用されるだけの存在に向かっているような懸念があります。

ところで、
「飲酒事故の実態が常時誰にも見えるような仕組み」
というのはわかりにくい表現でした。
本論と矛盾するように感じられるかもしれませんが、たとえば、
飲酒運転による事故およびその疑いの強い事故に関しては、日々、データーを公開し、それを蓄積しておき、明らかな飲酒運転者の名前は公開していくような仕組み
です。
ともかく実態をみんなに見えるようにしていくということです。
ネットを活用した市民ジャーナリズムの役割も考えられるかもしれません。

投稿: 佐藤修 | 2006/09/17 08:12

東京都の今年現在までの飲酒の死亡事故が20人くらいと聞き、少ない気がしましたが、多分飲酒運転はなくならず、巧妙化するのではないか。実名を公表すればネットリンチの格好の材料になりますが、就職差別等の温床になる気がします。
実際当事者以外は何でも攻撃対象を見つけて血祭りに上げるだけのネタでしかないと思います。
別の話ですが追突されただけで落下してしまうというのは普通の橋や高速でもありうることですが私自身は何時もそこが怖く感じます。

投稿: 田端 | 2006/09/17 11:33

名前の公表は慎重にすべきかもしれませんね。

ただ私は、今の報道があまりに匿名で、画面の網掛けが多いのが気になっています。
私のまわりでもストーカー被害者がいて、過去にもこのサイトの中から名前を削除してほしいという連絡を2人からもらいました。
ストーカー被害ではないですが、名前の削除の要請は結構あります。

田端さんが懸念されるように、
攻撃志向の強い社会になってしまっているのかもしれませんので、慎重に検討する必要はありますね。
攻撃的にではなく、お互いに相互抑制的な社会に向かえないものでしょうかね。
それこそが成熟社会ではないかと思うのですが。

それと高速の橋は怖いところが少なくないですね。同感です。

投稿: 佐藤修 | 2006/09/17 12:14

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