« ■「よこはま乳腺と胃腸の病院」拒否判決 | トップページ | ■報道されないもう一つの社会の動き »

2006/12/09

■アミネ一家の不幸は他人事なのでしょうか

今朝の朝日新聞朝刊に小さく出ていた記事です。

イラン人一家を退去処分 法相の在留許可下りず 最高裁で家族全員の国外退去処分が確定した群馬県高崎市のイラン人、アミネ・カリルさん(43)一家が8日午前、東京入国管理局に出頭した。法相が特別の事情をくんで国内在留を認める「在留特別許可(在特)」は下りず、一家4人の国外退去を命じた。

アミネ・カリルさんは、1990年、日本がまだ好景気でバブルに湧き、イランとの間でビザなし渡航を維持していた時期に、移住労働者として日本に入国。他の多くのオーバーステイの外国人と同様、役所に行って外国人登録もし、子どもたちは公立の学校に入学し、日本人の友達と共に、日本人と同じように生活してきました。
ところが、1999年、APFS(Asian People's Friendship Society)という外国人支援団体が、日本人と同化した子どもたちを抱えるオーバーステイの家族に在留特別許可を求める一斉行動を提起したのをきっかけにして、逆に違法滞在が問題視され、アミネさん家族は特別許可が下りずに裁判になってしまったのです。
詳しくはAPFSのサイトをご覧ください。

日本の裁判所や行政のご都合主義というか、管理志向がよくわかります。
この問題に関しては、APFSが積極的な活動を展開してきましたが、残念ながら国外退去という事に向かっています。
不法滞在者の国外退去事件などと軽く考える人もいるかもしれませんが、彼らにとっての国外退去は生命の危惧さえあるものです。
アミネ一家が15年以上、滞在しているという事実を考えれば、それこそ「時効の法理」が適用されてもいいように思いますが、明確な証拠がある殺人罪に時効が成立するのに、こうした事実には適用されないということも法律に疎い私などには全く理解できません。
国家とは何かを疑わざるを得ない事件です。
国家の品格などという(私にとっては)無意味な議論が世間に横行していますが、大切なのは品格ではなく、国家の存在目的ではないかと私は思います。
国家は誰のためにあるのか、何のためにあるのか。
それによって「品格」の評価基準が全く違うのです。

それにしても、アミネ一家の不幸は他人事なのでしょうか。
明確には説明できませんが、私の暮らしの隣にあるような恐ろしさを感じます。

|

« ■「よこはま乳腺と胃腸の病院」拒否判決 | トップページ | ■報道されないもう一つの社会の動き »

政治時評」カテゴリの記事

コメント

 不法滞在は、無免許運転と同じように、法を犯し続けているものだから時効がないのでは?
 それと、どこの国家でも、国家は国民のためにありますよ。囚われずに広い視野を持ってみたら如何でしょう。
 私は逆に「恐ろしさ」を感じません。相手の言い分も聞かない門前払いではなく、航空券を携えず出頭しても責めることなく、根気良く対応していますね。
 

投稿: 田舎 もん | 2007/01/27 16:33

田舎もんさん
ありがとうございます。

>囚われずに広い視野を持ってみたら如何でしょう。

そうですね。そうしないと事実は見えてきませんから。
どうも独善的になりがちなのが問題です。
反省しなければいけません。

ただ、
>どこの国家でも、国家は国民のためにありますよ。
というところには、どうも疑問を感じてしまいます。
国民が国家を守るという構図のほうが実感できます。

イラク派兵のチラシを配っただけで長期間拘留され、君が代を歌わないだけで解雇され、という事件をたくさん見るうちに、
なにやら恐ろしさを感じてしまうわけです。

それに判断基準があいまいなのも気になりますし、
一時は認めておきながら恣意的に翻意するのも、何か怖いです。

あんまり視野が広がらなくてすみません。

投稿: 佐藤修 | 2007/01/28 08:16

 日本人は強制送還というものに鈍感すぎます。強制送還なんて日本人には全く関係ないものですから。でも日本には多くの外国人が住んでいます。アミネさん一家の場合、外国人に対して過酷な、外国人の人権なんて全く考えられてない日本の法律の犠牲になっています。
 同じようなことが神戸長田のベトナム人一家に起こっています。わたしは彼らを応援しています。詳しくは、神戸外国人救援ネットのHPhttp://www12.ocn.ne.jp/~gqnet/をみてください。

投稿: F・K | 2007/02/02 09:25

F.Kさん
ありがとうございます。
とても共感できます。
荷物ではあるまいし、強制送還なんてありえない話だろうと私も思います。
もしあるとしたら、もっと納得できる仕組みを創るべきだろうと思います。
中国や朝鮮の人たちを労働者として日本に強制連行した歴史を思い出してしまいます。

ホームページ、読ませてもらいました。
こうした活動が各地で展開されているのですね。
もっとみんなに知ってもらいたいですね。
CWSコモンズのほうでも紹介させてもらうようにします。

いつかお会いできますように。
ありがとうございました。

投稿: 佐藤修 | 2007/02/02 09:57

不法滞在は無免許運転と違うぞ。犯罪じゃない。駐車違反と同じ行政罰だ。
中古車販売っていうカタギの仕事を持ってる奴を国外追放するなんて馬鹿としか思えない。韓国人武装強盗団を追放しろよ。

投稿: 革命戦士長州カ | 2007/02/18 13:22

法が定められているのなら、その法に沿わねばならないのです。
勝手に、法を変えることはできません。

もし、そうなったとき、なんでも罷り通る世の中になってしまうでしょう。

色々な暴動も起きるでしょう。

そして、私たちは法にも守られていることを覚えていなくてはなりません。

難しい問題ですが、「感情」だけで、法に背く事は、できないのです・・・

アミネさんは、理解されていると思います。

投稿: 一個人 | 2007/04/27 17:46

一個人さん
ありがとうございます。

>法が定められているのなら、その法に沿わねばならないのです。

私は、そのことに少し異論をもっているのです。
ソクラテスの警告のところでも書きましたが、
http://cws-osamu.cocolog-nifty.com/cws_private/2006/02/post_54b8.html
法の捉え方方はいろいろあります。
常識的に言えば、人間(体制)が定めた法は、自然法や普遍的な法には優先されません。
いや、その前に、憲法にも優先されません。
だから違憲性という言葉が成り立つわけです。
人間が定めた狭義の法は相対的なものです。

さらに問題は、そのほうを遵守するのは誰かです。
アネミ事件の一つの問題は、法の適用における判断者の恣意性です。
同じような状況で違った結果が出るのは、いずれかの判断者が法に従わなかったということかもしれません。
少なくとも、判断の理由や根拠は明確にしなければいけません。
それが「法治」ということです。
問題の本質は、アミネ一家への同情などでは全くないのです。
彼らが理解しているかどうかも問題ではありません。
これに取り組んでいるAPFSのメンバーは、
決してそうした個別問題として動いているのではないのです。
事件はまだ終わっていません。
まだたくさんのアミネ一家がいるのです。

>勝手に、法を変えることはできません。

これは全くその通りだと思います。
しかし、今の日本の状況は、このことがかなりおろそかにされてきています。
そこに大きな危惧を感じています。
もしお時間があれば、このブログに何回か書いた、リーガルマインドの記事も読んでもらえるとうれしいです。

投稿: 佐藤修 | 2007/04/29 10:29

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■アミネ一家の不幸は他人事なのでしょうか:

« ■「よこはま乳腺と胃腸の病院」拒否判決 | トップページ | ■報道されないもう一つの社会の動き »