■貧困は平和への脅威
今年のノーベル平和賞は、貧困に苦しむ女性の自立を支えるバングラデシュの金融機関「グラミン(農村)銀行」とその創始者であるムハマド・ユヌス氏(66)に贈られましたが、ユヌス氏は受賞演説で「貧困は平和への脅威だ」と語ったそうです。
グラミン銀行は、NPOバンクについて書いた時に言及した新しいパラダイムの銀行です。
ユヌス氏はこの演説で、最近の大国の政治の動きが「貧困への闘い」から「テロへの戦い」に転じていることに異議申し立てしたわけです。
ユヌス氏の「貧困のない世界をつくることはできる。なぜなら、貧困は貧しい人々によってつくられたものではないからだ」という指摘は、私たちがともすると忘れてしまう真理です。
ユヌス氏はまた、貧困など社会問題の解決を最優先する事業を「ソーシャル・ビジネス」と表現し、そこへの支援を呼びかけています。これは現在の産業パラダイムの転換の提案といってもいいでしょう。
平和の捉え方は様々ですが、そもそも貧困の存在自体が「非平和」状況と考えてもいいでしょうし、平和に反する様々な事件は貧困状況を維持し拡大することを目的としていると言えるかもしれません。
いや貧困を維持し拡大する方策は、何も戦争だけではありません。
平和そのものもまた、貧困の維持拡大の手段になりえます。
ローマ帝国における「パンとサーカスによる平和」は多くの貧困者の苦しみの上に成り立っていたのかもしれません。
家畜たちの平穏な暮らしと野生種の緊張感あふれる暮らしと、どちらが平和なのか、そして貧困が少ないのかは判断に迷いますが、ユヌス氏の「貧困は貧しい人々によってつくられたものではない」という指摘は、ことの本質を示唆しています。
「つくられた貧困」こそが問題なのです。
その対極には「つくられた豊かさ」が存在しますが、それももしかしたら「大きな貧困」の変種なのかもしれません。
その2つの「貧困」を私たちはなくしていかなければいけません。
ちょうどいま、「世界から貧しさをなくす30の方法」(合同出版)が話題になっています。
個人でもできることがあることがわかります。
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