■柳沢大臣の発言が意味すること
柳沢発言事件をめぐる国会議員の発言で気になることがたくさんなります。
たとえば、首相は「不注意な発言をしないように」と閣僚に注意したそうです。
どこか違和感のある発言です。
大本を正すことなく、発言に注意せよというわけです。
言い方を変えれば、「うまく騙せよ」と奨励しているわけです。
ここにすべての問題が象徴されているような気がします。
柳沢大臣の辞任や解任を求める議員の発言も、私にはなにやら違和感があります。
たとえば、「女性を代表して」という辻本さんの発言には素直にはうなずけません。
わざわざ代表する必要はありません。
こういう発想が個人を傲慢にさせます。
彼女は前回の自らの事件の意味を全く理解していないのでしょう。
それに代表するにしても、なんで「女性」なのか。
つまりこの発言は「女性を侮辱した」発言だと受け止めているようです。
たしかにそうですが、それだけではないでしょう。
そうした発想と柳沢発言のもとにある発想はつながっているような気もするのです。
こういう大臣がいる限り、国会審議には応じられないというのもよくわからない議論です。
もちろん、議論するのにふさわしくない相手とは議論しない、というのは理解できますが、この場合は当てはまらないでしょう。
それにこの問題もただ「辞任」を唱えるだけではだめでしょう。
何が問題かが、明確にされていません。
こうした事件が起こると、野党は必ずといっていいほど、抗議的な姿勢で権力闘争に持ち込みます。
問題の議論はほとんどすることがありません。
与党もまた選挙対策の視点からしか問題を受け止めません。
いずれの側も問題の大本などは関心がなく、波風が立ったことを利用しているだけの話です。
ですから事態はなにもかわりません。
そして形式的な男女平等参画とか少子化対策とか、ほとんど意味もない法律や政策提言を出しつづけるわけです。
本気で、問題の大本を議論しようなどという人はいないのでしょうか。
ところで、こうした批判は、私自身にも向けられています。
娘から、男性たちで本当に怒っている人はどのくらいいるか。お父さんだって、こういう発想がゼロではないでしょう、といわれました。それも具体的な私の言動を例示してです。心外ですが、冷静に考えれば娘の指摘は正しいのです。
もしかしたら、女性だってどうかわかりませんね。
みなさんはどうでしょうか。
そもそも少子化問題の最初の取り上げ方は、労働人口と消費人口が企業経営にマイナスだというところからだったと記憶しています。
今もその延長で議論されていますから、柳沢さんの考えは決して特殊例外ではないのです。
長く男性社会といわれる状況が続いていましたし、実態としてはいまなおその要素はかなり残っています。
そうした環境で育っていると、どうしてもみんなの発想の大本に女性蔑視の視点がうまれるのかもしれません。
それをうまく使い込んで成功する女性たちも少なくないわけですから、それがすべて男性を利しているわけではありません。
しかし、たぶんそうした社会はそろそろ限界に来ているように思います。
少子化は、その一つの現れでしょう。
社会原理の大本から変えていかなければ少子化の流れは変わらないように思います。
児童手当を増額したり、保育支援の仕組みを充実したりすることも大切ですが、社会のあり様を真剣に考えることも大切です。
先ずは自らの生き方を見直してみることから始めるのがいいです。
さて今日は家の掃除から始めましょうか。
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コメント
「少子化対策」ということばから「生む機械」発言が飛び出すのは当然だと思います。
地球規模で考えれば、エネルギー多消費国の人口が減る日本の少子化は望ましいはずです。
少子化が困るのは、経済成長にとってマイナスと考えられているからですよね。(ほんとうはプラスにできるかも)
それはそれとして、今求められているのは、人々がこどもを楽しく育てたくなる幸せな社会を創るにはどうしたらいいかということじゃないでしょうか。
それは「少子化対策」ではなく、「幸せ化施策」です。
女性就労のサポートだけじゃなく、男たちが会社生活から家庭生活へ軸足をシフトするための施策を、
みんなで考えなければならないと思います。
投稿: 大西充寛 | 2007/02/01 13:39
大西さん
ありがとうございます。
全く同感です。
特に、
>男たちが会社生活から家庭生活へ軸足をシフトするための施策を、みんなで考えなければならないと思います。
と、私も思います。
「幸せ化施策」を考える委員会。
そういう委員会ができて、誰でも画参加できるようになれば、
きっといろいろな知恵が出てきそうですね。
野党もそうした視点を持ってほしいですね。
同じようなレベルで議論するだけでは、前に進みませんから。
投稿: 佐藤修 | 2007/02/02 09:45