■沖縄密約事件請求棄却に思うこと
毎日新聞の西山記者によるいわゆる沖縄密約事件はいまでも強く印象に残っている事件です。
西山記者の歴史的なスクープは、国家権力とそれに追随するマスコミによって、矮小なゴシップ事件に貶められ、本質的な問題はいつの間にか忘れられてしまいました。
私もすっかり忘れていました。
しかし、その後、西山さんが暴いた事実は、どうやら真実だったことが確実になってきました。
そして西山さんは国家の嘘を暴くために、訴訟を起こしました。
その裁判の結果が27日に出されました。
不思議なことに毎日新聞にはあまり掲載されていないようですが。
判決は請求棄却でした。
今回の訴訟は西山さん自身の損害賠償請求という民事裁判だったのですが、
「不法行為から20年が過ぎているので、損害賠償請求権は自動的に消滅する」として請求は棄却されたのです。
西山さんの主張はJANJANの記事をお読みください。
外交機密という言葉があるように、外交には密約は必要だと、私たちは何となく思っています。
国家防衛上、当然ではないかという人もいます。
本当でしょうか。
そもそも国民主権の国家において、国民に内緒での国家防衛戦略などというのがあるのでしょうか。
密約を締結する権限など、首相にもないはずです。
戦時中であれば、そうしたこともありえるでしょう。
それは古代ローマからきちんと制度化されています。
しかし平和時に、国民に隠してまで国家の根幹に関わるような密約があっていいでしょうか。
まさに、そうしたことが問われているのが現代です。
そうしたことを議論する絶好のチャンスでしたが、裁判官はそれを選びませんでした。
主権国家間の戦争の時代は終わろうとしています。
アントニオ・ネグりによれば、今や世界の日常は戦時状況になりました。
それを加速させたのがブッシュであり、小泉ですが、
それによって一見、主権国家の権力は強化されたようにも見えます。
しかし実際に強化されたのは人間を管理する体制です。
ネグりは、そうした国境を越えたネットワーク状の見えない権力を「帝国」と呼んでいます。
スターウォーズやターミネーターの世界がすでに始まっているのです。
小泉やブッシュは、その走狗でしかありません。
西山さんが暴こうとしている「国家の嘘」は、
主権国家というものがどういうものなのかの本質を垣間見せてくれます。
しかし、その先にもっと多くの地平を感じます。
戦時状況の日常を生きるのではなく、
誰もが気持ちよく暮らせる社会にいきたいとのであれば、
西山さんたちの活動を見習わなければいけません。
平安は、向こうからは来ないのですから。
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