■大統領の陰謀と首相の犯罪が存在した良い時代
昨日書いた西山事件が気になって、昨夜、「大統領の陰謀」を観てしまいました。
ウォーターゲート事件を追って、ついにはニクソン大統領を辞任させたワシントンポストの記者を扱った実話に基づく映画です。
もう30年前の映画ですが、テンポのよい、しかも何となく尻切れトンボのような、まさに最近の映画に似た作品です。
最近の映画はますます尻切れトンボが多いですが、まあ、それは今日の話題ではありません。
ニクソンが大統領を辞任したのは1974年ですが、
同じ年に日本では田中角栄首相がロッキード事件で辞任しました。
当時は日本にもアメリカにも、志と根性をもったジャーナリストがおり、司法も一応、良心を維持していたようです。
国家犯罪と大統領や首相の犯罪とはもちろん同じではありません。
しかし、昨今のような大政翼賛会的国家体制のもとでは、それらはかなりかぶさっているようにも思います。
これだけ格差が構造化してくると、強いものの側につくことの意味が極めて大きくなりますから、その流れがますます強まるでしょう。
そう思っていたら、まさにそれを象徴するような笑えない話が新聞に出ていました。
朝日新聞の記事の一部を引用します。
山梨県議選で、初当選したばかりの横内知事派が与党議員を増やすため、小泉前首相流に敵対する県議の選挙区に「刺客」候補を立てようとしたところ、その役を買って出る人が次々登場、標的となった県議の引退が続出している。有権者からは「オール与党体質の中で、勝ち馬に乗ろうとしているようにしか見えない」との嘆きも聞こえる。
勢力拡大に喜ぶ声はあるが、知事の選対幹部だった県議などは「誰も彼もが『知事選で応援した』と言うが……」と苦々しげだ。知事が立候補予定者に贈る「祈必勝」の張り紙の依頼は、知事選で敵対した県議からも絶えないという。 知事の後援会幹部の表情は複雑だ。「自称『刺客』まで当選すれば、オール与党で議会対応は楽になるが、議会のチェック機能は期待できなくなる。知事が裸の王様になってしまわないだろうか」
笑い話のような話ですが、こうした動きは決して少なくないはずです。
日本の地方政治は国政がモデルなのですから。
しかし、こうした動きが広まれば、選挙は意味を失います。
残念なのは、もはや大統領や首相の犯罪は成立しない時代になってしまったことです。
30年前は、まだとても良かった時代だったのかもしれません。
あの程度の事件で、というとヒンシュクをかいそうですが、まああの程度の事件で辞任させられたのですから。
ところで、私の知人が熟議投票を広げたいと活動しています。
熟議投票とは、千葉大学の小林正弥教授が「熟議民主主義」の一環として提唱されている考え方で、平和への結集を目指す市民の風で話題になっています。
私も共感している考え方ですが、時代の流れはむしろ無議論投票に向かっているような気もします。
ともかく「勝ち馬」に乗ろうとみんな動いているのです。
議論の結果の勝ち馬ではなく、議論以前の勝ち馬です。
私のように、勝ち馬にもなれず、勝ち馬にも乗りたくない中途半端な人間はどうしたらいいでしょうか。
時代を嘆きながら、思索にふけるのがいいかもしれません。
そのせいか、最近、ものすごく学ぶ欲求が高まっています。
今日からラスキンを読み出しました。
ところで、「大統領の陰謀」ですが、
アカデミー助演賞をとったジェーソン・ロバーズ演ずる編集主幹ベン・ブラッドリーの言動は、何回観てもワクワクします。
こうした上司は今の日本の企業にいるのでしょうか。
もしいたら、その職場のメンバーはきっとみんなモティベーションが高いでしょうね。
部下を元気にしたかったら、この映画を観るといいです。
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