■「憲法改正手続法」を「国民投票法」と詐称する犯罪
昨夜の報道ステーションに国民投票法成立に取り組んできた自民党の保岡議員が出演していました。
そこで、古館さんや加藤さんと議論していましたが、その話の内容に驚きました。
古館さんは、最後の切れ味が悪かったものの、とても粘って質問していました。
これがいまの「放送法」管理下での限界なのかなという気がしてみていました。
本を読みながら聴いていたので聴き違いかもしれませんが、
最低投票率の議論に関して、保岡議員はこんな答をしていました。
35%の投票率で80%の人が賛成した場合、国民の28%が賛成したことになる。
40%の投票率で60%が賛成したら、24%が賛成だから、35%の投票率だったときよりも賛成者は少ない。
もし40%を最低投票率と定めたら、5%の人が投票をボイコットしたら、投票が無効になり、28%の賛成が活かされない。
とまあ、こんな説明でした。
この人は完全な詐欺師ですね。
さすがに加藤さんも古館さんも唖然としていましたが、めちゃくちゃな論理過ぎて、誰も反論する気になれないでしょう。ですから詐欺は成り立ちます。
オレオレ詐欺などはこういう人にかかったら可愛いものでしょうね。
そもそも国民投票法には大きな詐欺要素があります。
その法律名です。
この法律は、「国民投票法」ではなくて、「憲法改正手続法」と呼ぶべきです。
国民投票法と名づけたが故に、これが「国民主権の完成」などという意見が出てきてしまうわけです。
日本の政治はクリプトクラシー(盗賊政治)だと指摘している人もいますが、ますます大掛かりになってきました。なにしろ犯罪を取り締まり裁く側も、すべてが仲間の盗賊団、詐欺団ですから、困ったものです。
自己防衛しなければいけません。まあ、無理かもしれませんが。
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コメント
憲法96条を素直に読めば前段の各議院では「総議員の三分の二」とし、後段の国民投票ではなんの断りもなく「その過半数の賛成」とあるので、「その」は「国民の総数」即「有権者の総数」と解すべきではないか。
投稿: 京極浩史 | 2007/06/05 08:54
京極さん
ありがとうございます。
悩ましい問題ですが、多くの人は「投票者の過半数」と受け止めているようです。
しかも無効票は含まないと考える人もいます。
法の主旨から考えれば、私も国民(有権者)の過半数と理解したいいところですが、法というのは論理の世界ではなく、解釈の世界ですから、悩ましさが残ります。
投稿: 佐藤修 | 2007/06/05 12:04
>35%の投票率で80%の人が賛成した場合、国民の28%が賛成したことになる。
40%の投票率で60%が賛成したら、24%が賛成だから、35%の投票率だったときよりも賛成者は少ない。
もし40%を最低投票率と定めたら、5%の人が投票をボイコットしたら、投票が無効になり、28%の賛成が活かされない。
とまあ、こんな説明でした。
最低投票率をどこに設けても矛盾が出るという分かりやすい
例だと思いますが、どこが詐欺的だと思われたのでしょうか?
また、この説明をまったく理解できなかったらしい古舘氏と
加藤氏はTVに出演する知識人として不適格だといわざるを得ません。
また古舘氏は放送の公共性をまったく理解していないことに
大変驚きました。自説を述べたいのであれば新聞・出版物
で述べるべき。
かなり呆れました。
投稿: 竹井二郎 | 2007/06/27 23:34
竹井さん
ありがとうございました。
詐欺的と思ったのは、都合のいい数字を挙げて説明しているからです。
都合のいい数字を挙げて説明するのは、詐欺師の典型的な行動ではないかと私は思っています。数字の設定も現実的ではないように思います。
反対者が賛成者よりかなり少なくとも、少数派の反対者が選挙をボイコットすれば、結果を逆転させられるということを証明したいのであれば、もっとしっかりした論理を組み立てるべきです。
また憲法改正は多くの国民の参加を得る仕組みこそが重要です。国民の関心を高め、投票率を高める過程こそが大切です。ボイコットには私は賛成できませんが、最初からボイコットを前提にして考えている発想にも驚きを感じます。多くの人がボイコットしなければいけなくなるような改正にこそ問題があると思います。最高法規である憲法を、そうした「対立」の状況で変えることには違和感があります。もっとしっかりと議論すべきです。
憲法条文では、明確に書かれていませんが、私はその精神は国民の過半数が賛成することによって改正が成立すると受け止めていました。
大切なのは『法の精神』だと私は思っています。
投稿: 佐藤修 | 2007/06/28 07:05