■サプライチェーン・マネジメントの家庭への侵入
昨日の続きです。
最近の経営戦略のひとつが、サプライチェーン・マネジメントです。
これも1960年代から議論されていた経営テーマですが、明確な戦略として意識されてきたのは1980年代からでした。
サプライチェーンとは、原材料の源泉から最終消費者にいたるプロセスを統合的につないで考えるということですが、その統合する範囲に「消費過程」までを組み込もうというのが、昨日、言及した記事(「サプライチェーンを一般家庭まで延ばす」DHBR)の内容です。
これまではサプライチェーン・マネジメントは小売店で終わっていました。消費者が購買した後は消費者の管理に入るわけです。しかし、そこで経済的には無駄が発生します。消費者の管理はいかにも気ままだからです。
たとえば、今朝、わが家では朝食のパンが不足しました。昨日、買い忘れたのです。私は違うものを食べましたが、パンのメーカーは売上げを減少させたことになります。パン1枚が何だと思うかもしれませんが、社会全体では大きな額になります。
イギリスでは、そうした消費者の買い忘れで、年間90億ドルの売上げ減少を引き起こしていると、その記事は書いています。
そこで、消費者が購入した後も、商品管理ができないかという戦略が出てきました。
その萌芽は、通販や宅配販売などではかなり前から試みられていますが、それをITで管理し、まさに企業によるサプライチェーン・マネジメントに組み込もうというわけです。
ICタグやIC組み込みの冷蔵庫が、それを可能にします。
記事にはこう書かれています。
未来の家庭では、ハイテクごみ箱が登場し、ICタグのついた日用品が捨てられると。自動的に注文したり、購入を促したりするかもしれない。
すでに冷蔵庫内の使用量がわかるスキャナー内蔵の冷蔵庫の試作が始まっているそうです。
その記事の最後はこうです。
サプライチェーンの概念で喜ぶのは企業だけではない。
言うまでもなく、消費者もそのメリットにあずかれる。
言うまでもなく? ・・・・
こういう発想を持つ人が、産業や経済を主導しているとしたら、私たちがケージに入った鶏に「進化」できるのも、そう遠い先ではないかもしれません。
先週、購入していた地下鉄の回数券の7枚が有効期限切れになっていました。ちょいちょい発生するこうした損失はなくなるかもしれませんが、それ以上に人生の面白さもなくなるような気がします。
ちなみに、私の今朝の朝食は、久しぶりのホットケーキでした。
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