■がん対策基本計画の根底にある医療パラダイム
がん死亡率を20%減らすことを目指す、がん対策基本計画が閣議決定されました。日本のがん医療はアメリカに比べて、大きく遅れているといわれていますし、日本における「がん」への理解にも大きな問題がありますので、こうしたことが議論されることは歓迎したいのですが、どうも最近のこうした議論が「20%削減」というような数値目標に目が行き、その根底にある考え方があまり議論されないのが気になっています。
家族のがん治療体験から、がん対策の出発点は私たちの常識の見直しから始めなければいけないのではないかと、私は強く思っています。
トルコのベルガモンはアテネほど有名ではありませんが、古代世界の文化の中心地のひとつでした。塩野さんの「ローマ人の物語」にも何回も登場します。
私がベルガモンを訪問したのは10年以上前ですが、アクロポリスに残っているトラヤヌス神殿の遺跡はトルコ旅行で一番印象的だったもののひとつです。繁栄していた頃の文化の高さを感じさせます。
ベルガモンには医神アスクレピオスの神殿があります。アスクレピオス神殿は医学校でもあり、また療養所でもありました。私はそこで聖水を飲んできましたが、その診療所のことにはあまり関心を持ちませんでした。
ところが、その診療所を訪れて人生を変えた人がいます。
メキシコのオアシス病院の創設者アーネスト・コントレラスです。
その息子の書いた「21世紀の健康」(河出書房新社)に次のように書かれていました。
その療養所は、我々が現在知っている病院とはかなり違っていた。というのは、患者は3つの建物を通らなければならなかったからだ。最初の建物で、患者は、宗教上のカウンセラーに会った。彼らは、霊的に診察されることの必要性を信じていた。2番目の建物で、患者は、精神状態を診察する心理学者に会った。最後の建物で、患者は、身体的な診察を受けた。その考えに、父は愕然とした。ペルガムムの病院は、患者の身体だけでなく、人間全体を癒す所だったのである。ペルガムムを訪問して、父はこの考えに啓発されたのだ。それは、父が従うべき啓示であった。これがオアシス病院の始まりだそうです。
息子のフランシスコ・コントレラスはこう書いています。
本質的に我々は、身体、健康、魂が統一された生き物として設計されている。しかし、むやみに忙しい現代社会では、全体的でバランスのとれた生活を営む余裕がない。我々は身体、精神、魂を持つ統一体であり、それぞれを分割することはできない。身体のみを重要視し、精神と魂を無視する医師は、充分な医療を実践できていないことになる。(同書231頁)
女房はいま、サプリメントとしてAHCCを飲んでいます。これはオアシス病院でも使っているものですが、その関係で私もオアシス病院のことを少しだけ話を聞かせてもらいました。そして、その院長が書いた本に偶然、先週出会えました。これはきっと意味のあることです。
並行して、いま、梶田昭さんの書いた「医学の歴史」(講談社学術文庫)を読んでいますが、医学に対する私のこれまでの常識がいかに浅薄なものであったかを思い知らされています。
しかも、ただ知らなかっただけではなく、ちょっと素直に考えれば気づいたことに気づかなかったことの気づきもあります。
病院や医学界への不信感は強まるばかりです。
そして、学校で学んだ知識が、世界を曲解させることがあることも、いま改めて実感しています。子どもたちのような清明な目と心が大切です。
がん対策基本計画の根底にある「がん」観はどういうものなのでしょうか。
昨今の病院や医療行政の不祥事を思い出すにつけ、この計画が悪用されなければいいがと思います。エイズの時のようなことがなければいいのですが。
ちなみに、ヒポクラテスはこのアスクレピオス派の流れをひく治療医でした。
そして重要なことは長生きだったことです。
彼はこう言っています。
「自然は病気の癒し手である」
とても共感できます。
医療と工業はやはりパラダイムが違います。
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