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2007/06/03

■国民主権国家という壮大な幻想

年金保険料の納付記録が5000万件もなくなってしまったという報道があります。
本当に5000万件なのかどうかわかりませんが、判明後の政府の対応も含めて、国民主権国家という壮大な幻想の実態が見えてきます。

そもそも政府の役割は何でしょうか。
大きな役割の一つは、国民の財産の保護です。
そこには税金や政府主管の保険料も含まれます。
もちろん税金などで創られた施設も含まれます。
税金や保険料は国民から「政府」に財産権が移ったわけではありません。
しかし、そのあたりの仕組みや考えは、残念ながらあいまいのままできています。
なぜあいまいにしているかというところに、事の本質があるわけですが。

国民の財産の保護という場合、課題は3つあります。
「国民」とは誰か。
「財産」とは何か。
「保護」とは何か。
いずれも明白なように思うかもしれませんが、考えていくと全く明確ではありません。

たとえば「国民」。
日本ではまだ基本的人権すらしっかりとは保障されていない人たちがいますが、彼らは国民でしょうか。国籍も認められず、選挙権もなく、「棄民」のような扱いを受けた人もいます。いや、今もいないとはいえません。
税金を払っている人が国民という捉え方もできますが、税金を払っていても選挙権もなく保護対象にならない人たちもいます。

「財産」。
これも難物です。私的所有物と考えれば比較的簡単ですが、誰かに帰属しない財産はたくさんあります。むしろそうしたものがあるから、私たちは生きていけます。
たとえば、きれいな空気、人をつなげあう言葉や文化、心和ませる自然などの「コモンズ財産」はどう考えればいいでしょうか。
大切なのは「私的財産」ではなく、「コモンズ財産(共的財産)」です。
しかし残念ながら政府はどちらかといえば、それを壊すほうに重点がありそうです。

「保護」もまた多義的です。
単に「現状」を維持することではないでしょう。
先日書いた「知的所有権」制度は、短期的には特定の個人の利得を守るかもしれませんが、長期的には知的財産を活かし大きく育てることにはならないかもしれません。

また長くなりそうです。
今日、書きたかったことは、
政府が守ろうとするのは、一部の人の私有財産だということです。
その「一部」の範囲は時に変化しますが、決して全員ではありません。
つまり今の国民主権国家は「コモンズ国家」ではないのです。

保険金給付は、保険料名目での国民財産徴収のための見せ掛けのものでしかないのかもしれないと疑問さえ沸いてきます。
実際にこの数十年、所管部署の関係者はそれを好きなように浪費し、そのお咎めもなしに、今もかなりの浪費が行われています。
もちろんまじめに働いている人はいますが、かれらも収奪されるほうの人なのです。
まじめに働く人たちで外部との壁を構築するというのは、組織の本質です。
現状では、国民年金保険や厚生年金保険は、国民の財産を保護する仕組みではなく、収奪して一部の人たちの私欲を満たすための制度ではないかと思われても仕方がありません。
もしそうでないのであれば、保険金の計算根拠はもっと当事者に分かるようにすべきですが、そうしたことは全く行われていません。
少なくとも、契約に基づくものではなくお上による民の支配の仕組みであることは間違いありません。
自分がもらっている保険金額が正しいのかどうかなど、おそらく誰も分からないのです。
そうしたことの現われが、今回の納付記録不明事件です。
国民主権国家とは、大いなる偽装です。

しかし偽装とはいえ、理念があるのであれば、実体を育てていく契機にはなりえます。
そうしたビジョンとグランドデザインが不在なのが問題の本質だろうと思います。

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