■脱北者を人道上、受け入れるという発想
北朝鮮から4人の脱北者が日本に辿り着きました。
「人道主義の原則に基づき、本人の意思を尊重して処理する」と日本と韓国の政府の関係者は語っています。
乗ってきたのは腐りかけた木船だったといいますが、無事、辿りつけたことを他人事ながらホッとします。どれほどの恐怖を味わったことでしょうか。
こうした脱北者のニュースが流れるたびに、「人道上」という言葉が気になります。
なぜ生命の危険をおかしてまで自らの生活地から脱出するようなことが起こるのでしょうか。
そこにこそ、「人道上」の目は向けられるべきではないでしょうか。
問題は2つあります。
「国境の存在」と「北朝鮮という国家の実状」です。
往来を制限する国境がなければ、人は自由に行き来できます。
国家を超えて自由に自らの住む場所を決めることができることこそ、私は基本的人権ではないかと思います。
今の基本的人権は国内での「許可された人権」でしかありません。
人道上というのであれば、そうした国境を越えて自由な往来をこそ議論すべきでしょう。
国家や国境があっても、自由に往来できれば問題はありませんが、なぜか近代国家は国民を囲い込むようになりました。
そこに国家の本質があるのかもしれません。
次の問題は死を覚悟で脱出しなければいけない北朝鮮という国家状況の存在です。
その存在を許しておいて、人道上議論をしても始まりません。
たまたま今回の4人はその世界を抜け出られましたが、大勢の人たちがその世界にまだいるわけです。
人道上というのであれば、むしろ脱出すらできない人たち、いや、そうした人たちが存在するような状況を問題にするべきです。
念のために言えば、これは北朝鮮に限ったことではありません。
人道問題は定義も難しい問題です。
いつも思うのは、問題を引き起こす原因というべき実態は問題にされずに、例外的な人だけが「人道主義的扱い」を受けて、何となく事が決着していくことが、いつも納得できないのです。
本当に関係者は「人道上」と本気で考えているのでしょうか。
もしそうなら、もっと能動的に動くはずではないか。そんな気がします。
「人道上」などという言葉は使わないほうがいいような気がして仕方がありません。
そういえば、イラク派兵も「人道支援」でした。
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