■事実(THE FACTS)が創られる時代
米下院で審議中の従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案は、まもなく外交委員会で採決される見通しだそうですが、これに関連して、6月14日、ワシントンポスト紙に「事実(THE FACTS)」というタイトルの全面広告が掲載されました。4月末、同紙に掲載された「慰安婦に対する真実」という広告への反論です。
広告主は「歴史事実委員会(the Committee for Historical Facts)」。屋山太郎、櫻井よしこ、花岡信昭、すぎやまこういち、西村幸祐の5人メンバーです。
賛同者として国会議員44名、知識人14名が名を連ねています。
そこでの主張は広告を読んでいただきたいですが、日本政府や軍が慰安婦動員に介入したという文書を見つけられなかったとし「日本軍が若い女性たちを性奴隷に追いやった」という慰安婦決議案内容は歴史的事実と違うと反論しています。
ワシントンポストに掲載された広告とその翻訳文(コメントもついていますが)は、ネットで読めます。
これに関するさまざまなコメントもたくさん出回っていますので、それを読んでほしいですが、私が気になったのはタイトルの「THE FACTS」です。
事実は一つでしょうか。
特にこうした広がりのある問題について言えば、さまざまな側面があります。
どこに焦点を当てるかで、全く反対の「事実」を描き出せます。
こうした手法はこれまで多くの人が意図的かどうかはともかく使っていました。
最近、こうしたことがとても気になっています。
たとえば抗がん剤の効果の説明もそうですし、住民参加の意見もそうです。
裁判における検察と弁護の主張のほとんども必然的にそうなるようになっています。
環境政策や福祉政策でも、環境運動や福祉の陳情活動でも同様です。
なぜそうなるのでしょうか。
そこに「対立」や「競争(勝敗)」の発想があるからではないかと思います。
もし「共創」や「共生」の発想で取り組むならば、状況は変わるはずです。
THE FACTS。
不寛容で傲慢な姿勢を感じさせる言葉です。
せめて「ONE FACT」というくらいにしていたら、コミュニケーションが成り立ったかもしれません。
「事実」が創られる時代がまた近づいているようです。
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