■手続きの時代の働きの場
今日の朝日新聞に、新宿区立小学校の新任の女性教諭(当時23)が昨年6月、自ら命を絶った事件が取り上げられています。
詳しくはその記事を読んでもらいたいですが、こういう事件です。
念願がかなって教壇に立ち、わずか2か月後に、なぜ死に至ったのか。両親や学校関係者に取材すると、校内での支援が十分とはいえないなか、仕事に追われ、保護者の苦情に悩んでいた姿が見えてくる。ただ本人が弱かっただけではないかという見方もできるでしょう。
しかし、こうした事件がさまざまなところで起こっているような気がします。
その背景には、「働くこと」の魅力が失われているという時代の流れがあるように思います。
以前、ディーセントワークのことを書きましたが、
そもそも働くことはわくわくするほど楽しいものだったはずです。
生きることとつながっていましたから。
しかし、近代化は、その働きを「作業」にしてしまいました。
その話は繰り返しませんが、昨今の「働きの場」が楽しくなくなった理由の一つは、
現代が「手続きの時代」だからだと思います。
新聞にはこう書かれています。
まず提出を求められたのは食育指導計画、公開授業指導案、キャリアプラン……。離れて住んでいた父は娘と電話で話していて「追いまくられてると感じた」。午前1時過ぎまで授業準備でパソコンに向かい、そのままソファで眠る日が続く姿を姉が見ていた。子どもたちのための生き生きした授業をしたいという彼女の夢の前に、きっとたくさんの作業の壁が立ちはだかったのでしょう。
ともかく、いまは手続きが重要なのです。指導計画、何とかプラン、実践よりもそうしたものが要求されるのは、「管理」のためといってもいいでしょう。
新聞記事はさらにこう続けています。
娘は姉や祖母に「保護者からクレームが来ちゃった」と話してもいた。身勝手な父母が学校をだめにしている事例は決して少なくないでしょう。管理志向はますます強まってしまうわけです。
昨日、書いた医療訴訟もその典型例です。
こうした状況の中では、働くことが楽しくなるはずがありません。
そうして「働きの場」はどんどんと崩れ出している。私はそう思っています。
教師の働きの場が壊れてしまえば、学校は成り立ちません。
いまの学校改革は視点とベクトルが間違っています。
社会保険庁職員や自治体職員の不祥事も、こうしたことと無縁ではないように思います。
そう言えば、国会の議論も「手続きの話」が多すぎて退屈でした。
しかし、たとえば今日の長妻さんの質問のように、実体に迫る議論が始まりました。
政府の答弁は相変わらず手続き論ですが。
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