■持続可能性を高めるための多様性
グローバリゼーション、といっても経済中心のグローバリゼーションですが、その進展で世界の経済は深くつなってしまいました。
サブプライム問題で明らかになったように、世界のどこかで発生した経済問題が世界中に深刻な影響を与えるような状況になりました。
まさに、上海での蝶の羽ばたきがアメリカにハリケーンを起こしてしまうという、バタフライ効果が現実のものになりだしたのです。
世界の経済がつながっている以上、多かれ少なかれそれは避けられないことです。
1920年代にも、そうした世界同時不況はありました。
しかしそうした状況を克服する方向で経済政策が動いてきたかといえば、そうではありません。むしろ逆だったように思います。
しかも金融工学が異様に発展し、実体経済とは桁違いの大きな力を持ち出したのです。
てこの原理で損益を異常に拡大する仕組みが次々と開発され、まさに世界経済はカジノの場になってしまったような気がします。
その影響が、私たち生活者の生活という実体経済を左右するようになってしまったのです。おかしな話です。
金融エンジニアやベニスの商人たちには「堅気の世界」には入ってきてほしくないと思いますが、逆に「堅気の生活者」がその世界に吸い込まれているようです。
いうまでもありませんが、日本の財界はすでに魂をお金に売り飛ばしていますから、何の倫理観もありません。経団連や同友会も地に堕ちました。
文化の世界では、構造主義や文化人類学が世界の多様性を積極的に肯定することによって世界の豊かなビジョンを描きました。
しかし実際に起こったのは、多様な文化の消滅です。
異邦が発見されると、そこに強い文化が入っていき、結局は絡めとってしまうわけです。
いわゆる「文化人類学のジレンマ」ですが、今の時代においては、違法や多様性を維持することは至難なことです。
しかしこのままいくと、実体経済そのものが存立しえなくなりかねません。
汗して働くことが報われない社会になってきているのです。
それだけではありません。
世界そのものが極めて脆弱なものになりかねません。
多様性こそが組織の強さ、今様に言えば、持続可能性を保証するものです。
上海での蝶の羽ばたきが、異常に増幅されるような仕組みは見直されなければいけません。
さまざまな段階でリスクを回避し、ホメオスタシスとホメオカオスがバランスして、全体の持続可能性を高めていく新しい経済システムが構想されるべき時期に来ているように思います。その原理はもう見つかっているはずです。
なぜそうした動きが現実のものにならないのか。
この世界から自由がなくなってきているからかもしれません。
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