■悪魔と天使が共存する経済システム
原油価格の上昇で、さまざまな生活用品が値上がりしているようです。
最近の経済は石油の上に構築されている「油上の楼閣」のようなものですから、仕方がないのでしょうが、それにしても不安定というか、わかりにくい経済になっています。
しかし、それは実は「操作可能な経済」でもあることを見落としてはいけません。
問題は操作できるのは限られた人だけだと言うことです。
ところで、経済学の根底にある労働価値説によれば商品の価値は人間の労働によって生み出されます。
しかし経済的には商品の価値が顕在化するのはそれが売れた時です。
つまり「売れた価格」が、商品の価値を表します。
社会の実状に合わせて、的確に設計された商品は高く売れますから、それを実現した労働の経済的価値は高まります。
逆にいくら汗をかいても、社会に受け入れられない商品をつくっていては売れませんから、そのための労働は報われずに、経済的報酬をもらえなくなるおそれがあります。
同じ人の労働でも、ある時には価値を生み出し、ある時には価値を生み出さないということが起こります。
人間の労働を的確に活かし、社会的価値を生み出すことで、労働価値を創出することが企業経営の課題です。
しかし、昨今のようなグローバルに絡み合った経済システムのなかでは、外部要因によって労働の価値が左右されることも少なくありません。
そればかりか、汗をかかなくても高い価格を実現することも可能になってしまっているのです。
それが見えなくなっているのも現在の経済システムの特徴です。
いま話題の守屋事件のように、時に顕在化しますが、それは氷山の一角です。
システム自体に「悪魔」が内在しているのです。
原油価格の上昇で、さまざまな商品やサービスの価格が上昇しています。
これはそのまま、そうした商品やサービスの送り手である働く人たちの労働価値の上昇につながるわけではありません。
むしろ原油価格の上昇によるコストアップが働く人たちの労働への配分を減少させる恐れもないわけではありません。
自分たちが送り出しているもの以外の商品やサービスの価格上昇は、生活費の上昇につながり、労働を支えるコストを上昇させます。
そう考えていくと、おそらく原油価格上昇ということに限ってみても、原油に直接依存している商品やサービスだけではなく、結局はすべての商品やサービスの価格上昇の契機と理由になるはずです。
つまり「価格」というのは、さまざまな価格連鎖の中で成り立つものであり、必ずしも商品そのものの価値によって決まるものではないということです。
そうした不安定で人為的な価格に依存して労働の価値を決めることは危険です。
ましてや、そうして評価された労働価値を人間の価値と混同してはいけません。
経済的労働価値は、もしかしたら人間の価値と反比例しているのではないかという気さえします。
そういう考えを持つと、社会の風景はちょっと違って見えてきます。
原油価格の上昇による価格体系の変化をどういう方向にもっていくか。
これこそが国家の経済政策ではないかと思います。
価格上昇のポジティブな側面をしっかりと評価すべきかもしれません。
「悪魔」が内在するシステムには「天使」も当然住んでいるのです。
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