■科学技術信仰の高まりへの懸念
環境問題は科学技術の発展によって解決すると考えている人が増えているようです。
昨日発表された内閣府の「科学技術と社会に関する世論調査」によると、6割以上の人が「社会の新たな問題は科学技術で解決される」と考えています。
4年前の調査に比べてなんと3割近い上昇だそうです。
科学技術信仰がまた戻ってきているようです。
30年前を思い出します。
イリイチは、地域に根差した自律的な生活(ヴァナキュラーな生活)とそれを可能にする暮らしの基盤(サブシステンス)を近代市場経済が壊してきたと言っていますが、科学技術は近代市場経済のパートナーでした。
ですから、近代西欧科学技術は産業のジレンマと同じ構造を持っています。
科学技術の発展が新たなる課題を生み出しつづけるというジレンマです。
しかも、その課題は次第に人間のリズムとは無縁なものになり、人間のための科学技術がいつの間にか、科学技術のための人間という倒錯した関係を生み出していきます。
最近の日本はすでにそうした状況に入っているように思います。
私は、「社会の新たな問題は科学技術で解決される」などとは思っていません。
むしろ、「科学技術は社会の新たな問題を生みだす」と思っています。
もちろん、ある意味での解決は、科学技術がしてくれるでしょうが、それ以上の課題を生み出してしまうことの方が問題です。
ですから、イリイチが言うように、私たちは、ヴァナキュラーな生活、つまり大地に根ざした生活を取り戻すことが大切だと考えています。
そうした生活を通して、私たちの暮らしの基盤が再構築していけるかどうかが課題です。
だからと言って、科学技術を否定するつもりは全くありません。
その効用は決して小さくはないからです。
問題は誰が科学技術の主人になるか、つまりテクノロジー・ガバナンスです。
それによって、近代西欧科学技術とは違った科学技術が主流になるかもしれません。
科学技術はなにも現在の形だけではないはずです。
今のような生活者から見えなくなってしまった科学技術は無限に暴走しかねません。
そんな関心から、暮らしと技術を考えるサロンというのをやっています。
関心のある方がいたら、ご連絡ください。
次回は「原発問題」を考えてみる予定です。
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