■そこのけそこのけイージス艦が通る
19日に起こったイージス艦衝突事故ではさまざまなことを考えさせられました。
事故発生後5日も経過するのに、吉清父子がまだ見つからないことはとても心痛みます。
奇跡が起きないものかと他人事ながら祈っています。
この事件が突きつけている問題はたくさんあります。
テロ対策上の問題や国防上の危機管理体制の問題も議論され出していますし、
防衛省の情報隠蔽体質も問題でしょう。大臣の統制力の問題もあるでしょう。
しかし私が一番感じたのは、民と官の意識のあまりにも大きな違いです。
まさに違う世界に住んでいる人たちを見ているような気がしました。
その溝はもはや埋められないところまで来ているような絶望感をもちました。
気持ちの往来が全くといっていいほど感じられません。
事故にあった吉清哲大さんは、毎年、ホームレスの支援団体に魚を届けていたといいます。
金は無いけど魚なら支援できると毎年数回、炊き出しに協力していたそうです。
その話を知った時、なぜか私は涙が出ました。
お金などなくても、できることはたくさんなるのです。
どうして神様は、こう言う人を守ってやらなかったのでしょうか。
哲大さんだけではありません。
同じ漁師町の仲間たちが、漁を休んで2人の捜索を懸命に続けているのにも感動しました。
新聞によれば、
現場まで往復6時間。5万~7万円に及ぶ燃料代は各自の負担だ。テレビで見た海岸での女性たちの祈りの情景も心に残りました。
しかも、いまは1年でも大切な漁期。
(中略)
漁港では毎夕、捜索を終えた船が戻るころに親族6人ほどが一列に並んで岸壁に立つ。
沖から戻った漁師たちに頭を下げる。22日夕も親族が「どうもありがとうございました」と声をそろえると、漁師たちは「心配いらねい。気にしなくていいっぺ」。
事故が起きてから毎朝続けている「御法楽」という儀式だそうです。
その中の一人、雷(らい)孝子さん(74)は、
「うちの父ちゃん(夫)の時も、みんなずっと捜してくれたんだ」
と語っています。
10年前、夫の乗った船が衝突事故にあった時に、
漁師仲間が休漁して1週間、真冬の海で捜索を続けたのだそうです。
漁船による捜索で、形見のニット帽が回収されたといいます。
今回の事件の原因は、ただ一つ、
「そこのけそこのけイージス艦が通る」という自衛隊関係者を含む「官」の姿勢だと思いますが、
それとあまりにも対照的な「民」の世界のあたたかさを見せてもらいました。
そうした日本の民の文化が、官や公や金によって踏みにじられようとしていることがとても悲しいです。
イージス艦「あたご」がたくさんの漁船の存在を知りながら、直進して清徳丸を壊したことは、
最近の「お上」がやっていることを象徴しているのかもしれません。
吉清父子に奇跡が起こってくれますように。
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