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2008/03/20

■運慶の「大日如来像」には海外で活躍してほしかったです

運慶の「大日如来像」が一昨日、ニューヨークでオークションにかけられました。
一部から海外流出を懸念する声が出ていましたが、結局、三越が落札し、日本に残ることになりました。
写真で見る限り、惚れ惚れするような気品と慈愛の感じられる仏像です。

私は、こんな気品のある仏像が日本にとどまったことを残念に思います。
海外、とりわけアメリカの人たちに、この仏像を見てほしいと思いました。
仏の慈悲で世界が変わるかもしれないからです。

日本の仏教界はもっと世界に働きかけるべきではないかと思います。
仏教徒の私としては、人類の未来に向けて、仏教はもっと大きな役割を果たせるように思いますが、そうはなっていません。
一神教の経典宗教と違い、仏教は昨今のような「時間軸が短くなってしまった世界」では本領が発揮できないのかもしれません。
その上、ミャンマーでもチベットでも、追いやられた僧侶の暴力行為すら生まれてきています。
とても残念な状況ですが、仏教界のリーダーが動き出しているようには見えません。
しかし、たとえばこの仏像を見ていると、心和み、これまでの生き方を自問したくなる人も出てくるでしょう。
これはイコンや西洋の宗教画からは生まれてこない感情ではないかと思います。

国家の貴重な文化財の海外流出に反対する考えがあります。
今回も署名運動まであったようです。
たしかにかつてあったような収奪による流出は許されるべきではありません。
しかし、貴重な文化財だからといって、国家が独占するのもおかしな話です。
ましてや公開もされずにただ独占するだけでは意味がありません。
むしろ多くの人たちに見てもらうことをこそ目指すべきだと思います。
文化財まで私有することには、たとえそれが個人の私有でなく、国家の「私有」であっても、私には違和感があります。

私は日本の仏像が大好きです。
その前に座ると心が和み、世界や歴史とのつながりを実感できるからです。
ですから公開されていない仏像は公開してほしいですし、世界にもどんどん出していってほしいと思います。

今回、三越が落札したことが残念です。
仏たちには、もっと大きな世界で活躍してほしいと思っています。

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