■産業のジレンマの克服
島根県にある木次乳業の配達用トラックには「赤ちゃんには母乳を」と大きく書かれています。
岩波新書の「地域の力」で、そのことを知りました。
牛乳を生産販売している会社が「赤ちゃんには母乳を」と言っているのに感心しましたが、すぐに、そんな当然のことにも感心する自分のおかしさに気付きました。
赤ちゃんには母乳を、というのは素直に考えれば当然のことであり、なんら感心するべき言葉ではありません。
しかし、その本の著者も、その標語に感心したのでしょう。その話を本のトップにもってきています。
そうしたことが起こるほど私たちの発想は「産業」社会の洗脳を受けているのです。
滋賀県の包装資材メーカーの新江州という会社の会長は、「環境に負荷を与える包装材は減らすべきだ」と言っています。
その著書「循環型社会入門」には、これからの企業は「環境負荷削減の為に毎年生産高を減らす」ことが必要だと書いています。
書いているだけではありません。
循環型社会システム研究所までつくって、実際に環境問題に取り組んでいます。
近代産業の発展の基盤は、20世紀中ごろから「消費の拡大」に変質してしまった気がします。
おそらくその段階で、経済パラダイムが変わってしまったのです。
にもかかわらず経済学や経営学はあいかわらずの発想で、経済や経営そのものを目的化してしまってきています。
そのため、「産業のジレンマ」が確立してしまったように思います。
つまり、「問題解決のための産業」が、自らの発展のために問題領域を無限に拡大させてしまう構造の確立です。
企業経営も同じです。
なんのために企業を経営しているのか、あるいは企業で働いているのか、分からなくなってきているような状況が感じられます。
そうした状況の中で、木次乳業や新江州のような企業が増えているのかもしれません。
最近、そうした企業の話を聞くことが増えてきました。
その一方で、しかし、大企業は相変わらずの方向を進んでいるように思います。
大きくなりすぎたがゆえに、複雑なつながりが育ってきてしまったために、簡単には舵をきれないのでしょうか。
なにやら先日のイージス艦と漁船との衝突事故を思い出します。
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コメント
こんにちは。私は過去の地政学的歴史観から抜け出さないことには、環境問題等を根本的に解消することは出来ないと思っています。本当に解決するなら、今までのパラダイムは捨て去る必要があると思います。私のブログでは、海洋資源に着目しつつも持続可能な経済を実現して、その延長線上に人類の平和をもたらす「パクスマリーナ」構想という全く新しいパラダイムを提唱しています。是非ご覧になって下さい。
パラダイムとはいいながら、未成熟でまだつたないものです。いずれ、情報収集や思考実験など繰り返し補完して生きたいと考えています。
投稿: yutarlson | 2008/03/18 15:15