■円の価値が高まると日本企業は業績悪化という構造
円の対ドルレートが、一時的とは言え、ついに100円を切りました。
その円高が企業業績に打撃を与えることが懸念されています。
この論理が、昔から私には理解できずにいました。
円高が日本の経済力の高まりを意味するのであれば、企業の活動はやりやすくなるはずではないか。
個人で考えれば、円高になれば海外旅行はやりやすくなり、輸入品は安く買えますから、歓迎です。
円高になって個人生活が直接に損失を受けることはないように思います。
企業の場合はどうでしょうか。
輸入は企業でもメリットのはずです。
同じ価格のものへの円の支払いは少なくなります。
しかし、輸出の場合は円貨建てであれ、外貨建てであれ、結局は海外での価格は上昇させざるをえないので販売量の減少が起こります。
ですから輸出企業の業績にはマイナスだというわけです。
為替レートの変化の影響は、その国の経済構造によって変わってくるということです。
そこで私が気になるのは、円高という国民にとっては嬉しいことが、企業にはマイナスになるような経済構造でいいのだろうかということです。
ジェイン・ジェイコブスは「経済の本質」のなかで、
「輸出とは、その地域の最終生産物であり、地域のエネルギーの放出である」と述べています。
放出されるエネルギーが「過剰なエネルギー」であれば、地域の健康を維持するために好ましい活動であり、マクロ的に言えば、そもそもそこから利益を得る必要はありません。
もしそのエネルギーが「なけなしのエネルギー」をやむをえずに(不足資源を獲得するための資金稼ぎのために)行うものであれば、獲得しやすくなった分だけ売れなくなることは好ましいことです。
円高になったのであれば、輸出が減ることはむしろ肯定的に考えても良いように思います。
個人で考えて見ましょう。
同じ時間でできる仕事の報酬が上昇したら、仕事の量を減らすのが、理にかなった働き方だと思います。
ところが、そうした働き方を選ぶ人はほとんどいないでしょう。
そこにこそ、この50年の私たちの働き方、あるいは産業や経済の仕組みの問題があるように思います。
なにやらややこしい議論をしてしまいましたが、要は円高になって困るような企業活動のあり方には、どこか問題があるのではないかというのが、今日の問題提起です。
経済のことをあまり知らない素人の議論なのでしょうが、30年以上前からずっと思い続けてきたことを、今日は未消化のまま書いてしまいました。
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