■柳原和子さんへの追悼
ノンフィクション作家の柳原和子さんの訃報を新聞で読みました。
予想はしていたものの、悲しい知らせでした。
杉本さんに続いての、私の価値観に影響を与えてくれた人の訃報です。
杉本さんの場合と同じく、柳原さんと面識があるわけではありません。
メールでの交流がわずかにあっただけの関係です。
私が柳原さんを知ったのは、彼女の「がん患者学」が契機です。
患者学という言葉に興味を持って購入しましたが、読み進むうちに辛すぎて、途中で放棄していました。
妻が胃がん宣告を受ける前の話です。
妻が胃がんになり、思い出して再読しようとしましたが、ますます駄目でした。
そんな時、NHKのテレビで「がんキャンペーン」が始まりました。
妻と一緒に見ました。
そこで「元気そうな」柳原さんを見ました。
翌週も柳原さんが出ていました。
柳原さんの表情が少し曇っているような気がしました。
そのことをホームページに書きました。
そうしたら1週間くらいたった頃、柳原さんからメールが届きました。
私のホームページの記事が彼女の目に入ったのです。
そのメールに書かれていたのは、テレビや本の柳原さんとは違って、悩み迷う患者そのものでした。
文章も作家の文章ではありませんでした。
すごく親近感を持ちました。
それ以来、時々ですが、メールのやり取りが始まりました。
柳原さんには中傷のメールも届いていたようです。
ネットで自分をさらけ出すと、本当に中傷的なメールが届きます。
暗い世の中になりました。
柳原さんの孤独さの深さも、ちょっとだけ垣間見た気もしました。
でも彼女は、私の妻のことも心配してくれましたし、妻ががんになった夫たちの支えあう仕組みをつくったらともいってきてくださいました。
病気に直面している人特有のやさしさが伝わってきました。
それに、柳原さんの「生きる意欲」に、私たちはとても元気付けられました。
ところが昨年の春頃からメールがなくなりました。
私たちも良いニュースを送れないため、メールしなくなりました。
ですからずっと気になっていましたが、調べる勇気が出てきませんでした。
そして昨日の訃報。
患者運動が広がるきっかけをつくった柳原さんの名前は、ずっと残るでしょう。
柳原さん
ありがとうございました。
柳原さんとの約束は守れそうもありませんが、許してくれますよね。
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