■金融制度の目的と実体経済の安定化
サブプライムに端を発した投機資金が原油や農産品などの市況商品に向かったため、小麦などの値上がりが起こり、私たちの食材まで軒並み値上がりしてきています。
最近、私自身、スーパーに買い物に行きますので、その値動きは実感できます。
それにしても、投機資金が実体経済を動かし、余剰資金を持っている人が蓄えもない人たちの生活を不安定にする経済に大きな違和感を持ちます。
そもそも「お金がお金を稼ぎ出す」という仕組みが、なぜ実体経済とこれほど深くリンクしているのかが私には全く理解できないのです。
経済の知識がないといわれればそれまでですが、金融資本主義などといわれる現状は、どう考えても人間の生活を基本にした経済発想ではないような気がして、学ぶ気にもなりません。
自然に根ざした人間の暮らしは、天候により、また地域により、不安定になったり偏ったりすることは仕方がありません。
その不安定さや偏りを緩和するために、空間や時間を超えて安定さを高めるための手段として「通貨」が登場しました。
もちろん通貨が生まれた契機やその目的は、それだけではありませんが、少なくともその根底には人間の暮らしを安定させ、便利にしようという動機があったと言っても、そう不正確ではないと思います。
ところが、現状の通貨はどうでしょうか。
生活を支えていくために必要な量を桁違いに上回る通貨が世界を飛び回り、私たちの生活を混乱させる状況が生まれてしまっているのです。
そして、手段だった金融システムが逆に人間の暮らしや活動を手段として自己増殖し始めているのです。
金融工学は発達しましたが、その専門家たちさえ金融システムの全体像は把握できなくなり、変調を来たした状況にも右往左往するだけです。
今回のサブプライム騒ぎで、その実態が明らかになったわけです。
金融工学の専門家たちは、要するに自己進化した金融システムに隷属することによって、それが生み出した巨額な資金で養われている奴隷でしかないように思います。
金銭的に「豊かな生活」をしているとしても、人間としての豊かな生活とは全く違うように思います。
もちろんどちらがいいかは、個人の価値観によりますから、なんとも言えませんが、問題は汗して働く実体経済の担い手の生活を圧迫することです。
企業の役割は金儲けだと明言したミルトン・フリードマンのようなマネタリストがノーベル賞をもらう世界は、私には居心地の悪い社会です。
金融制度の目的は、生活の安定性を高めることであるべきだと私は考えています。
そのモデルは、頼母子講や無尽講であり、あるいは小規模な共済の仕組みです。
こうした仕組みは、何も日本に限った話ではありません。
人がつくる社会には、おそらく例外なく存在していたはずです。
お互いに支え合う感性は、おそらくすべての生命体に埋め込められているのではないかと思います。
その感性が育ててきた仕組みは、どこの社会にもあるはずです。
昨日、お会いしたさいたま市在住の人から、いまでも醤油が無くなると隣から借りてくるような近所づきあいがあるとお聞きしました。
それもまた、ある意味での金融システムの原型かもしれません。
大銀行に象徴される昨今の金融システムの役割は40年前に終わったように思います。
にもかかわらずむしろ金融システムは、そのまま突き進み、自己進化して、独自の世界を構築してしまいました。
最近問題になっている新銀行東京は、まさにその古い仕組みの枠から抜け出せずに、見事に金融工学の担い手たちに利用されてしまっただけの話です。
みんなわかっていたのに、新しい仕組みを創出しなかったのです。
講や結いは、誰かが利益を上げるのではなく、みんなが利益をシェアするシステムですので、お金持ちや権力者には興味のない仕組みでしょう。
みんなが一緒になってつくっていかなければならない仕組みを創るのは、本当に大変です。
私もそうしたことに関心があり、ささやかに取り組んできましたが、片手間では出来ないことがよくわかりました。
まずは周辺の仲間内でとも思ったのですが、それさえも難しいです。
実体経済を支援し、生活の安定を保証するはずの金融制度が、生活を壊しかねない昨今の金融システムの状況を変えていくことは出来るのでしょうか。
私の対処策の一つは、お金から出来るだけ離れた暮らし方に向かうことです。
都市部では無理かもしれませんが。
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