■民意とは何なのか
「軍縮問題飼料」5月号の「読者の声」に、こんな記事が載っていました。
民意とはなんなのか。小泉政権下の衆院選では自民を圧勝させた。安倍政権下では民主を圧勝させた。そして、他の事例もあげた後、その方は「民意に確かな視座はあるのでしょうか」と書いています。
政治家もよく「民意」という言葉を使います。
多くの場合、自分が考えている考えを裏付ける場合に使うことが多いようですが、人によってその内容に込めている意味合いは正反対の場合すらあります。
「民意」は、いつも多様なのです。
確かな視座ではなく、多様な視座が民意の実体です。
にもかかわらず、「民意」は合意形成しうるものと考えがちなところに大きな落とし穴があるように思います。
合意形成が必要なのは、個々の「民」ではなく、民を統べる「公」の側なのです。
「民意」とは政治家にとって便利な言葉でしかないように思います。
人々が持っている多様な意思を「民意」に収斂する必要はありません。
異質さを認め合う関係をどう構築していくかが重要です。
そう考えれば、二大政党制という政治体制が誰のものであるか明確です。
民主主義を目指すのであれば、克服すべきものです。
異質さの中から出てくる合意と異質さを合意させるのとは全く違ったものです。
ネグリの「マルチチュード」を民主主義のために結集するには、多様な意思を大切にしながら、多様さをまもるための行動力に顕在化させる仕組みが必要かもしれません。
ネグリの日本での講演会は実現しませんでしたが、マルチチュードから学ぶことは少なくありません。
ちなみに、冒頭の投稿の自民と民主の圧勝は、要するに自民も民主も同質だということの現われかもしれません。
多様な民意がもはや日本には存在しないのではないかと、この頃、思えて仕方がありません。
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