■予言の自己実現
「予言の自己実現」に関しては以前、一度書いたことがあります。
たとえば、根も葉もなくても、「あの銀行はつぶれる」と誰かが予言し、それが広まってしまうと取り付け騒ぎが起こって、実際につぶれてしまうというような話です。
アメリカの社会学者ロバート・マートンが言い出したそうですが、そのこと自体が「予言の自己実現」の事例でもあるような話です。
事実を報道するのがマスコミですが、同時に事実を生み出していくのもマスコミです。
どうも最近は、後者の機能のほうが前者よりも大きくなっているような気がします。
つまり私たちは、マスコミがつくりだした世界で生きているのかもしれません。
なにやらSFの世界のようですが、あながち否定できない気がします。
とすれば、マスコミにはそれほど大きな情報収集能力も必要なく、取材活動もさほど重要ではなくなっているのかもしれません。
そして、たぶん実際にもそうなっているのでしょう。
いま話題の後期高齢者医療制度の出発点は、医療費がどんどん増加していくということのようですが、そこでは後期高齢者の医療費を減少させるという発想は全くありません。
30年ほど前に、医療産業について調査したことがあります。
その時も医療費がどんどん上昇していくというのがすべての人の予想でした。
私自身は大きな違和感を持ちましたが、「産業のジレンマ」のパラダイムの上で考えると、それ以外の発想はないのでしょう。
医療の発展とは医療費が増加することなのです。
日本の福祉政策はすべて、そうした過去延長型の予想に基づいて政策立案されますから、財政破綻は組み込まれているわけです。
ちなみに、いまの環境製作も結局は同じパラダイムでの議論だと思います。
これに関しては、以前書いたことがあります。
最近、なぜか「予言の自己実現」ということが気になって仕方がありません。
私たちの行動は、すべて誰かの予言の沿って動いているような不安感があります。
いったい誰の予言なのでしょうか。
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