■金融権力
昨日、福島に行く往復の新幹線で、岩波新書の「金融権力」(本山美彦)を読みました。
かなりすっきりしました。
昨今の金融関係者ののさばり方には怒りが鬱積していたのです。
どう考えても犯罪者としか思われない福井日銀総裁や、そのお仲間の竹中某やら小泉某やらの金銭に埋もれた人たちが、明確ではないとしても取り上げられていることに、胸がすっきりしたわけです。
彼らがやってきたことは、法を犯していないかもしれませんが、私には犯罪以外の何ものでもないからです。
彼らは、日本の文化をアメリカの金持ちたちに売り渡したとしか、私には思えないのですが、私の知識ではとても説明できなかった思いをきちんと説明してくれています。
郵政民営化の意味やガソリン高騰の意味(それはガソリン税にもつながっています)もきちんと語られていますが、何よりも、ミルトン・フリードマンやアメリカの格付け会社の罪が語られていることもうれしい限りです。
フリードマンもそうですが、昨今の経済学者を通して、ノーベル経済学賞の本質にも胡散臭さを感じていましたが、その背景もわかり、私の感じていたこともあながち虚妄ではなかったこともわかりました。
昨今の経済に少しでも違和感をお持ちの方はぜひこの1冊を読んでほしいと思います。
グローバリゼーションの意味や金融工学者たちに変質させられてしまった現代経済の実状がとてもコンパクトに、しかし明確に語られている入門書です。
金銭の奴隷でしかない富裕層グループに雇われた金融工学者たちが、企業統治(コーポレート・ガバナンス)とか企業価値とか、さらにはコンプライアンスとかCSRとかいう着飾った言葉で、経済を変質させ、日本にまで格差社会を持ち込んだことがとても残念です。
ちょっと長いですが、一つだけ引用させてもらいます。
金融複合体は金融を、社会的に必要なものを作り出す「しもべ」ではなく、金儲けをするための最高の「切り札」に位置づけてしまった。その結果、自由化の名の下に、人々の金銭的欲望を解放してしまう金融システムが作り出されてしまった。カネがカネを生むシステムがそれである。そうした金融システムが、現在、「金融権力」として猛威を奮っている。「カネがカネを生むシステム」
こういう「ありえないこと」を実現する仕組みを認めてしまえば、人間が営々と積み重ねてきた経済は根底から崩れてしまうはずです。
そこでは人間は不要になってしまいます。
そんな世界では生きたくないと私はずっと思い続けています。
ちなみに、著者が「金融権力」と言っているのは、「金融という構造的権力」のことです。
ぜひ多くの人に読んでほしい気がします。
そうしたら郵政民営化などという不条理な話には乗せられなくなるはずです。
同じようなことが今なお、いろいろなところで進んでいることにも気づくかもしれません。
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