■「おかしさ」が蔓延している中で、声をあげることの難しさ
また北海道開発局の官製談合事件が発覚しました。次々と出てきますが、これをどう考えるか、です。
先週、電車のなかで、40代前後の2人の男性が話している会話が、耳に入ってきました。
「なんであの人
が2000万円も給与をもらっているの、何もしていないのに」
「あの人のおかげで仕事が回ってくるそうだよ」
「それでもあの人たちがいる限り、利益はあがんないんじゃないの」
「おれたちも2000万円、もらいたいね」
と、まあそんな内容でした。
「天下り」した人の話のようでした。
官製談合にしろ、居酒屋タクシーの虚偽申請にしろ、昨今マスコミで取り上げられるようなことはもう長いこと行われていることであり、関係者やその周辺の人はみんな知っていることばかりだろうと思います。
少なくともそのいくつかは、私も見聞しています。
にもかかわらず、私は異議申し立てもせず、告発もしませんでした。
あまりの不快さにタクシー券を使わずに郵送で返却したことはありますが、これはバブル時の民間企業でした。
行政以上に官僚的だといわれた有名な会社の若い社員が先輩を接待し、私はなぜかそこに巻き込まれたのです。
官僚が私的な研究会に参加し、その間、公用車を待たせていることを体験したことは何回もありますし、官僚の接待に類した場に付き合わされたことも一度ならずあります。
とても不快でしたが、異論は唱えませんでした。
私は当時まだ、会社勤めだったこともありますが、それがこの世界の「常識」だと思っていたのかもしれません。
おかしいことを「おかしい」とみんなが思い出し、言い出したら、状況は変わるでしょうが、さまざまなしがらみの中で、それができないようになっているのが現在かもしれません。
電車の中の2人が、事実を告発しても、たぶん2人が会社で不利な扱いを受けて終わるだけでしょう。
マスコミは取り上げることはないでしょう。
そんな話はいくらでもあることを彼らは知っているからです。
「おかしさ」が広がり、常態化しています。
常態化しているから、みんな「おかしさ」に麻痺している面もあります。
それは自らもまた、そのおかしさに同調していくことを意味します。
そうした状況の中では、「おかしさ」は争いの具に使う好都合な材料になります。
閣僚人事で「身体検査」が話題になりましたが、そうした「おかしさの世界」で活動してきている人を蹴落とす材料を見つけるのは、そう難しいことではないでしょう。
最初の問題、「次々と不祥事が発覚することをどう考えるか」ですが、
「不祥事」が社会の常識になっているということです。
そして、現在のような社会を維持していくために、それが必要であり、価値があることなのです。
「愛国心」のために敵を倒し、愛する国(自国)の山河を破壊しないと、「売国奴」と指差され、回りの人たちに迷惑をかける。
そんな社会構造がいまも続いているわけです。
おかしいことに声をあげることの難しい社会は、どこかにひずみをもたらします。
社会構造原理を変えないと、この状況は変わらないように思います。
声を上げにくいでしょうが、「おかしいこと」をおかしいと言い出さなければいけないように思います。
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