■会社そのものが商品化する時代
今年の株主総会の焦点は、社長をはじめとする取締役の再任問題でした。
アメリカ型のコーポレート・ガバナンス論におされて、出資者を束ねるファンドと経営者との対立という図式が広がっています。
しかし経営者もまた、ファンドと同じ土俵に上がってしまっているようにも感じます。
従業員やお客様の利益を背負っている経営者はどれほどいるのでしょうか。
簡単にいえば、会社の商品化が進んでいるということです。
グローバリゼーションという口実の元に、会社のあり方が大きく変化させられているわけです。
こうした状況の中で、わが国の上場企業のうち、買収防衛策を導入もしくは導入準備中の企業は500社を超すといわれています。
株式の持ち合いも復活しつつあるようです。
10数年前、金融ビッグバンといわれた時に、こうした動きはある程度見えていたはずですが、異論を唱える人はあまりいなかったように思います。
私は当時、日経新聞の2人の知り合いの編集委員にそれぞれ問題提起させてもらいましたが、彼らはあまり強い危機意識を持っていませんでした。
私がかなり信頼していた編集委員たちだっただけに、かなり失望した記憶があります。
また改めて書こうと思いますが、先週、ある法学者から最近の法改正の動きをお聞きしましたが、まさに当時危惧していたことが着実に進んでいるようです。
商品をつくっていた会社そのものが商品になってしまいつつあるのです。
私が会社にいた頃、上司の役員から、企業の使命は「雇用の場」を拡大していくことだとよく聞かされました。
その言葉は、私の仕事にも、そして私の退社にも影響を与えました。
ところが、今ではそんなことを考えている大企業の経営者はいないでしょう。
少なくとも日本経団連や経済同友会には1人もいないはずです。
もしいたら、昨今のようなひどい状況にはならなかったと思います。
最近の企業経営者、とりわけ大企業の経営者の使命は出資者(ファンド)に貢ぐことです。
社員はそのための手段でしかないのかもしれません。
ということは、自らもまた手段的な存在に成り下がったということです。
ですから、株主総会で部品のように簡単に取り替えられる存在になっても、自業自得でしかないのですが、その状況を続けていくとどうなるのかを考えると恐ろしくなります。
経営者はそろそろ目覚めてもいいのではないか。
それは単に自分の問題だけではないのです。
小賢しい買収防衛策を張り巡らせるのではない、もうひとつの対抗策があるのではないかとつくづく思います。
企業の動きを変える大きな影響力を、経営者はもっているのですから。
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