■梨は秋を感じて熟しだすのです
妻が大好きだった近くのすぎの梨園に、新盆のお供え用の梨を分けてもらいに行きました。
そこで杉野さんから、とてもいい話をお聴きしました。
「梨は秋を感じ出さないと熟さないのですよ」
今年は昨年よりも収穫が遅いですねという、私の質問への答は意外なものでした。
梨の実が秋を感ずる。
現場の人でないと出てこない、生きた言葉ですね。
今年は暑すぎて、梨もなかなか秋を感じなかったようです。
普通は、市場に合わせて、ホルモン剤などで熟す時期などを早めたりすることもあるそうですが、杉野さんのところはそれを一切していないのです。
人間の都合に合わせるのではなく、梨の生き方を大切にしているのが、杉野さんの哲学なのでしょう。
それはまさに日本古来の「自然と共にある生き方」です。
そういえば、この数日、暑さは一向に和らぎませんが、朝晩の空気に秋を感ずるようになりました。
梨はそうしたことを敏感に感ずるのでしょう。
私たち人間も、以前は梨のように季節を感じながら、豊かに生きていたのでしょうね。
しかし、いまや、梨ほどにさえ、自然を感じていない生き方になってしまっています。
持続可能性とか環境意識とか偉そうなことをいう前に、梨のように自然と共にある生き方を回復することが大切ではないかと、気づかされました。
杉野さんは、きっと梨とも話ができるのでしょうね。
最近の若者たちはコミュニケーション能力がなくなったと大人たちはよくいいますが、私が体験して限りにおいては、コミュニケーション能力がないのは大人たちです。
若者たちに不足しているのは、コミュニケーション能力ではなく、コミュニケーション体験です。
自然と切り離された生活環境で、コミュニケーションの相手がいないのです。
なにしろ周りにいる大人たちはコミュニケーションしてくれませんから、若者たちのコミュニケーション能力は発揮されることもなく、逆に押さえ込まれてしまっているのが実情のように思います。
本当は、梨のように自然とコミュニケーションする能力を子どもたちは持っています。
それは生物が持っている本来的な能力だからです。
それを押さえ込んでいるのが、もしかしたら今の教育かもしれません。
あるいは今の子育てかもしれません。
私も梨に見習って、もっともっと自然と共にある生き方をしようと反省しました。
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