■MBOのMは、経営者のMではなくマネーのM
昨日の臨時株主総会で、すかいらーくは投資会社の要請を受けて、創業一族の横川社長を解任しました。
2年前、MBO(経営陣が参加する買収)により上場を廃止、その後、経営の基本方針をめぐって、社長と株主が勝ったわけです。
MBOの本質が露呈されました。
最近はMEBO(management employee buy-out)などという言葉も出ていますが、結局はみんなファンドの餌食になるわけです。
ファンドにも良いファンドとハゲタカファンドがあるといわれますが、ファンドは要するに「お金」のことです。
良いも悪いもないと思いますが、ファンドなどというように、ある規模を超えてお金が集まると個人の意識や力を超えたパワーを持ち出します。
おそらくそれに太刀打ちできる個人はいないでしょう。
しかも、ファンドを構成するお金は、お金を増やしたいという人の期待を背負っています。
大富豪がパトロネージのために提供したファンドとは違い、そこでは「お金を増やすこと」が正当化され、目的になります。
その結果、そこに関わった人は、ほぼ例外なく壊れていきます。
企業ファンドに関わる人でまともな人に、私はこれまで会ったことはありません。
口では産業再生とか企業再生とか言っていても、人間への配慮はほぼ皆無ですから、まともな人とは言えません。
要するにお金の奴隷でしかない、金融権力の被害者なのです。
さて、すかいらーくの話です。
解任される前に、横川さんは社員に対して、「自分がやったことは間違いないと思うので辞任より解任を選んだ」と話したそうです。
無念さが伝わってきます。
「企業は株主のもの」というアメリカ流の企業観でいえば、株主が大きなパワーを持つのは当然です。
しかし、「株主」と「株主出資金」とは全く違います。
株主にはまだ「人間の心」がありますが、「出資金」には心などありません。
しかも、ファンドのような寄せ集めのお金には、個人の心は入り込む余地などないのです。
個人株主と組織株主は、全く異質のものであり、企業の資本金は、この30年の間に全く異質のものになってしまったのです。
そこをきちんと認識しておかないと、横川さんのような悲劇を繰り返すことになります。
横川さんはファンドの本質を見誤ったのです。
横川さんが、ファンドと一緒にMBOに取り組んだ時のMは、マネジメントのMではなく、マネーのMであることに気づかなかったわけです。
人が汗して育て上げてきた企業が、こうして次々と壊されていきます。
それにしっかりと立ち向かう経営者はいないのでしょうか。
いまこそ、企業のあり方を根本から考え直す時はないかと思います。
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