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2008/08/17

■節子への挽歌350:それぞれの初盆

初盆が終わりました。
今年、初盆を迎えた人は私の周りにも少なくありませんが、それぞれどんな初盆だったのでしょうか。
愛する人とゆっくりと語り合えたでしょうか。
静かな時を過ごせたでしょうか。

私の場合は、娘たちがとても気遣ってくれました。
彼女たちも母親の初盆でしたが、私への気遣いを強く感じました。
こうした文化を育ててくれた節子に感謝しています。

思わぬ人が来てくださったことも驚きでした。
節子の友人たちも、節子の初盆に思いを馳せていてくれていたでしょう。
節子の初盆を体験するまで、私は新盆見舞いという言葉すら知りませんでした。
初盆といっても、いままでは「言葉」だけで終わってしまっていました。
しかし、今回、自分が当事者になって、日本の文化の優しさを、改めて知りました。
その文化は残念ながらもうほとんど忘れられてしまっているのかもしれません。
自分がその立場になって、初めて自らの不義理さを痛感します。
恥ずかしい限りです。

昨日、送り火でお墓に行きましたが、とてもにぎわっていました。
提灯とやかんを持った数組の三世代家族も見かけました。
わが家の菩提寺は以前住んでいたところのお寺なのですが、数年前に転居してきた現在の家の近くにも、昔からの立派なお寺があります。
この地域は、我孫子でも古いところですので、地域とお寺のつながりも深いようです。
迎え火、送り火に来る人が道をふさぐほどです。
昔見た風景を久しぶりに見た感じです。
こうした風景はこれからだんだん少なくなっていくのでしょうか。

日本の仏教は葬式仏教などといわれ、お寺と地域とのつながりはあまりありません。
しかし、地域とのつながりを切ったのは、日本人の信仰心の問題ではなく、核家族化のせいではないかと思います。
葬式仏教でもいいではないか、と思います。
ただその葬儀があまりにも形式的になってしまっているのが問題なのです。

節子のおかげで、改めて日本の葬儀文化のことを実感させてもらっています。
葬儀は、通夜と告別式だけではありません。
そこから始まる大きな流れの中で、私たちは愛する人のことを考えながら、自らの生き方を問い直す機会を得られるのです。
同時に、人のつながりを子どもたちにも伝えていけるのです。
私は、数年前まではそうしたことにむしろ無頓着でした。
節子からはいろいろと教えられましたが、むしろ節子任せでした。
この1年、たくさんの気づきをもらいながら、改めて葬儀の意味を考えさせられました。

この挽歌の読者にも初盆を迎えた方がいらっしゃいます。
まだ会ったこともない人もいます。
その人たちは、どんな初盆を過ごされただろうか、そんなことも気になります。
まだ会ったことのない人の初盆に、私が思いを馳せることができるように、死者への思いはすべての人の心に拡がっているはずです。

初盆は、私たち家族だけのものではありません。
節子を送った今朝の般若心経は、そんな思いでまだ会ったことのない人たちの顔も意識しながら、あげさせてもらいました。

今日は昨日までとは打って変わって、秋を感じるような涼しさです。

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コメント

そうなのですね。その地域に住む住人と「お寺さん」との関係が無くなってしまっているのですね。いわゆる、本来の収入を確保してくれる「檀家さん」が居なくなってしまった事も、あるのではないでしょうか? 収入の道が無くなって「戒名」に、その収入を求め、そこの家の様子を見て、「院」・「居士」・「大姉」が入ると幾ら位とかで。

私が、「ど田舎」に住んで居りました時は、「部落長さん」が普段の時に当然の如く「各家」を回って「檀家」として集金(但し、その家の収入を考慮し)に来て「お寺さん」に、持って行って当然と言う考えでした。
また、「お寺」の屋根が傷んだから、「各家」に請求(カンパでは無く)と・・。でも、「やがては、お世話に為る」と考えて住人は文句も言わない。

都市化された街の朝、道を歩いている知らない人がすれ違いざまに「お早う御座います」の、一言も言えない!その一言を言えば、とても気持ちの良いものに・・!!

人間関係が、「格差社会」になったのと、どこかで「共通点」がある様な気がします。

投稿: 根本 賢二 | 2008/08/17 16:32

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