■節子への挽歌387:胡蝶の夢その1
中国の古典の『荘子』に、荘子が見た夢の話があります。
昔者、荘周夢に胡蝶と為る。荘周とは荘子の本名です。
栩栩然として胡蝶なり。
自ら喩しみ志に適へるかな。
周なるを知らざるなり。
俄然として覚むれば、則ち遽遽然として周なり。
知らず周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるか。
「蝶となった夢を見て目覚めたところ、自分が蝶の夢を見ていたのか、 あるいは蝶が今、夢を見ていて自分になっているのかわからなくなった」というような意味でしょうか。
夢の中で、節子に会うことが時々あります。
節子の身体を視覚的に確認できることは少ないのですが、気配は感じます。
電話で話すこともあれば、おかしな話ですが、彼岸の節子に会うこともあります。
夢の世界もまた、次元を超え、論理を超えています。
古今東西のSF小説でも、夢の世界と現実の世界が入れ替わる話はいくつかあります。
だれもが一度は願望することなのかもしれません。
この文章に続いて、こうあります。
周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。荘周と胡蝶は別物ですが、荘子は、万物は一つなりという「万物斉同論」を説いています。
此れを之れ物化と謂ふ。
荘周と胡蝶も、つまるところは同じものが、姿を変えて「物化」しているだけです。
万物は一刻もとどまることなく生滅変化している。一切の事物に区別はなく、あるときは蝶となり、あるときは人となる。
いずれも、変移の一様相にすぎず、そうした変化を物化と呼ぶ、というわけです。
荘子にとっては、夢と現実の間にも本来的な区別はありません。
この論を進めれば、私も節子も、斉同なるものが一時的に物化しただけのことです。
その節子が失われることで、私の半分が失われ、半身削がれた状況になっているのです。
半分が抜けた物が存在するのであれば、万物斉同ではないではないかといわれそうですが、そうではありません。
以前書いたボームのホログラフィック宇宙モデル論を思い出せば、説明はつくのです。
それに、万物斉同の世界には量の概念や時間の概念がありませんから、半分も全部も同じことなのです。
その正しさを、私は自分の身体感覚で実感しています。
夢の中で節子に会って、そこから私の人生をやり直せるとしたら、どんなに幸せでしょうか。
そうしたことのできる、ホログラフィーはできないものでしょうか。
あと100年もしたらきっとできるでしょう。
それまで待てないのが残念です。
この項は明日に続きます。
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コメント
お久しぶりでございます。毎日毎日有難うございます。奥様への挽歌、心から頷きながら納得しながら希望の意を深めながらetc有難く読ませていただく事が日課になって数ヶ月が経ちました。その間何度投稿しようと思いながら文章が纏まらず中断した事か・・・私は 此岸で一緒の時にああすれば良かったこうすれば良かったが有り過ぎて、彼岸で再開の時には見間違えられない程度にグレードアップしておきたいと心がけていますが、どうなりますか?佐藤様との共感部分の一つですが、主人を褒めていただく事が何と嬉しい事か。仕事上でお付き合いいただいた方々、技術的なご質問等で何度かお電話を戴いたお客様を始めご縁のあった方々から主人の人柄や技術面でのお褒めのお言葉は何より嬉しく励まされます。そして、本当に真面目に真剣に生きた主人は、やはり家族の誇りです。
『米田英樹さんありがとうございます』
彼岸で主人が待っていてくれると思うと心が軽くなる事もあります。
返信メールのはずが、主人に話しかけているようになってしまいました(私物化お許しください)
未熟な文章ですが又、メールさせていただきます。
ご活躍お祈りいたします。
投稿: 米田 雅子 | 2008/09/22 12:57
米田さん
ありがとうございます。
そうですか、日課にしてくださっているのですか。
私も書くことを日課にしたおかげで、何だか気分がとても和らいだ気がします。
>本当に真面目に真剣に生きた主人は、やはり家族の誇りです。
よくわかります。
私たちも、お互いに真面目に真剣に生きないと、それぞれの伴侶に「誇り」にしてもらえませんね。
時々、めげそうになりますが、再会の希望を捨てずに、誠実に生き続けようと思っています。
米田さんも、ご自愛くださいますように。
ありがとうございました。
投稿: 佐藤修 | 2008/09/22 20:29