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2008/11/01

■節子への挽歌427:秋になると娘から言われること

節子
秋晴れの、いい天気です。
節子がいたら、きっと「紅葉を見に行こう」と言いだすでしょうね。
節子は本当に行動的な人でしたから。

むすめと日光の紅葉の話になりました。
日光といえば、思い出す話があります。
わが家の「貧しさ」を象徴する話なのですが。

私が還暦の時だったと思いますが、長女のユカがお祝いに日光の金谷ホテルに招待すると言ってくれました。
ところが、節子も私も、それを素直に受け入れずに、日光は行ったことがあるし、それに1泊何万円もする金谷ホテルでなくてもいいよ、と反応してしまったのです。
わが家の旅行はいつも安いホテルや旅館で、せいぜい2万円どまりだったのです。
ユカは、たまにはもう少しいいホテルで、ゆっくりして来たらと勧めてくれたのですが、いわゆる「高級な」ということに、私たち夫婦は全くの価値を見出せないタイプでした。
育ちのせいでしょうか、節約家だからでしょうか、高いホテルに泊まると落ち着かないのです。
私自身は、過剰なサービスが好きではありませんし、もったいぶった料理などは大嫌いです。
気楽なカジュアルなホスピタリティが好みなのです。
節子もそうでした。
数時間を過ごす宿泊のために10万円を出すくらいならば、どこかに寄付をした方が気持ちがいいですし、その分、収入を減らした方が人生は豊かになるというのが私たちの考えでした。

むすめは、そうした私たちの生き方に異論があったわけです。
彼女にとっては、いつもと違った旅行を体験させたかったわけです。
私たちは、その娘の気持ちを素直に受け入れなかったわけです。
娘は、金谷ホテルでなければ招待しないと言い出し、結局、私たちは娘の好意を無にしてしまったのです。
今でも時々、その時のことを娘から言われますが、グーの音も出ません。

あの時、節子が反対しても、金谷ホテルに泊まるべきでした。
数年後、日帰りで節子と一緒にまた日光に行きました。
駅前で金谷ホテルのケーキを買って、娘へのお土産にしました。
しかし、そんなことでは許してもらえませんでしたが。

子どもたちからの贈り物は、それが何であろうと素直に受け取るべきです。
きっと節子もそう思っているでしょう。
でも私一人になってしまった今は、どちらの娘からも金谷ホテルプランは出てきません。
贈り物をもらえたのは、もしかしたら節子がいたおかげかもしれません。
幸福な時代だったのですね。はい。

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