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2008/11/23

■保護貿易がなぜ悪いのか

今回の金融サミットでも、リマのAPEC首脳会議でも、またアメリカなど経済先進国の首脳の発言でも、「保護主義の回避と自由貿易の堅持」が強く叫ばれています。
世界に広がってきている金融不安のなかで、新聞の論調も、保護主義を封じ込めよという論調が多いようです。

しかし、なぜ保護主義は悪いのか。
私はこれまでも全く理解できませんでしたが、貿易自由化や時代の流れという意識が埋め込まれていたせいか、あまり深く考えたことがありませんでした。
しかし、今回、改めて「保護主義」とはいったい「誰を保護するのか」という疑問が浮かびました。
いや、保護主義を封じ込めることで、誰が得をし、「誰が保護されないのか」、を考えると、問題の本質が見えてくるような気がしてきました。

30年ほど前に米の輸入が問題になりだしたときに、カリフォルニア米のほうがおいしいし安いという論調が盛んでした。
それを強く言い出して、各地で講演していたエコノミスト(知人でした)が、私のところにやってきて、「農業は全くわからないのだが、主張が話題になり有名になった」といささか自嘲的に打ち明けてくれました。
米国に農業視察に行って、その報告書を書いたのがきっかけでした。
彼の論考が、信念や洞察に基づくものか、時流に乗って利用されたものかは、断定できませんが、その時に私は後者だろうと感じました。
この件はもう30年以上前の話なので、書いてしまいましたが、この種の話は決して少なくありません。
私が、専門家や「有識者」を信頼できなくなったのは、そうしたことの積み重ねの結果です。

そうした米の輸入自由化の結果、日本の農業はどうなったのか。
汚染米事件は、そうした「成果」の一つです。
食料自給率の低下も、それによって推進された政策の結果なのです。
米の輸入に関する保護主義をやめることで、日本の農業は維持できなくなってしまったのかもしれません。
そして一番被害をこうむることになったのは、国民なのではないかと思います。

保護主義は国家エゴイズムだというイメージが多くの人にあります。
さらに生産者保護は消費者にはマイナスで、海外から安価な商品を輸入するのは消費者のためになるという主張もあります。
しかし、忘れてはならないのは、人はすべて生産者でもあり消費者でもあるということです。
さらにそれ以上に、生活者であるということです。
経済学や経済政策論と、実際の生活者の暮らしとは、違うのです。
専業主婦と同じく、専業生産者や専業消費者などは現実にはいないのです。

保護主義を封じ込めることを前提に考えるのではなく、何を守るのか、誰を守るのか、そうした視点から考えるべきです。
歴史の変わり目には、言葉を吟味しなければいけません。

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