■責任放棄の時代
日本経団連の御手洗会長(キヤノン会長)が昨日の記者会見で、
国内の大手メーカーで非正規従業員の削減が相次いでいることについて「景気の急激な落ち込みで各社は減産に追い込まれ、苦渋の選択で雇用調整を行っている。やむを得ない事情がある」と述べ、理解を求めた。そのうえで「景気を回復させることが大事だ」と語り、雇用環境の改善には政府による早期の景気対策が不可欠だと強調したと新聞で報じています(毎日新聞)。
この10年の政治の基調にあるのは「責任放棄」でしたが、経済界も「責任放棄の時代」に入ったようです。
経済界の誇りはどこに行ったのでしょうか。
利益が減少すれば雇用を切って、組織を守るという哲学は、1995年に当時の日経連が打ち出した「新時代の日本的経営」から推進されだしました。
アメリカからの圧力があったとしても、日本の財界も誰一人、異を唱えませんでした。
そこから労働者の権利が壊されていく方向に動き出したわけです。
キャノンの御手洗さんやトヨタの奥田さんは、その当時の財界のリーダーでした。
私は、彼らが日本の経済を最終的に壊した張本人だと思っていますが、そのツケを今受けているわけです。
しかし、彼らは、今なおしゃあしゃあと、「やむを得ない事情がある」と弁解し、「雇用環境の改善には政府による早期の景気対策が不可欠だ」と述べているわけです。
この人たちは、恥と言うものをしらないのでしょうか。
経済界のリーダーが、政府の責任にしているわけです。
その点においては、厚顔無恥な麻生さんと同じ仲間です。
これは日本だけの話ではありません。
アメリカでは、自動車メーカー3社の経営者がそろって、政府に「お助け」を哀願しているわけです。
何という恥知らずか。
麻生さんばかりを笑っていられません。
世界中が責任放棄の時代になっているのです。
そもそも企業のコンプライアンス論議は、そうした責任放棄の時代への対策として議論されだしたわけですが、現実的には逆にそれが責任放棄あるいは責任回避の仕組みになりだしています。
ちょっと考えれば、いたるところで責任放棄の動きが加速しているのに気づくでしょう。
責任放棄は生活面にも広がっています。
それにしても、大企業経営者による、あくどい派遣切りは、触れ込み詐欺以上に悪質です。
40年前までの日本には、そんな卑劣な発想はありませんでした。
経営者の最大の誇りは雇用を守ることでした。
困った時は従業員も一丸になってがんばりました。
そうした信頼関係が日本の経済を発展させてきたのです。
御手洗さんや奥田さんは、その文化を壊しました。
おそらく彼らは「経営」というものを知らないのでしょう。
能力以上の役割を与えられてしまったのでしょう。
ところで、派遣切りは決して企業を守ることにはならないでしょう。
トヨタやキャノンの時代は終わりました。
いや、人間を忘れてしまった大企業の時代は終わったのです。
IBMももはや先はないと思います。
あと10年持つでしょうか。
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