■「ローマ亡き後の地中海世界」と現代の世界
CWSコモンズにも書きましたが、塩野七生さんの「ローマ亡き後の地中海世界(上)」を読みました。
一昨年まで15年間にわたり毎年刊行されていた「ローマ人の物語」の続編です。
「ローマ人の物語」もそうでしたが、豊富なエピソードが、退屈な通史では味わえない面白さを醸し出し、読み出すと途中でやめられなくなります。
今回も面白くて、一気に読んでしまいました。
実は読み始める時、イスラムがどう描かれるのか、中世の暗黒イメージはどう打ち砕かれるのか、楽しみだったのですが、その期待は見事に裏切られました。
塩野さんはいつものリアリズムで、そんな期待は断ち切ってしまっています。
イスラム教は好戦的で、中世はやはり暗黒なのです。
本書の中心である第2章は、「聖戦」です。
イスラム教の聖戦 ジハードとキリスト教の聖戦 グェッラ・サンタです。
そこで語られているのは「海賊行為」なのですが、読んでいるうちに、最近の金融資本の動きとイメージが重なってきてしまいました。
当時の海賊といまの金融資本家とが同じように見えてきてしまいました。
ジハードとグェッラ・サンタもそうです。
一昨日起こったイスラエルとハマスの聖戦ゴッコは海賊行為の延長でしかありません。
まさに歴史はまた、暗黒の中世に戻りだしているのかもしれません。
本書の帯に、こう書かれています。
秩序なき地中海を支配したのは「イスラムの海賊」だった秩序なき現代世界を支配したのは金融資本だったのかもしれません。
問題は、それに続く歴史です。
本書の下巻は1月に出版されます。
そこにこれからの世界を考えるヒントはあるでしょうか。
本書には、「ローマ人の物語」の時と同じように、現在の世界を見るヒントがたくさんちりばめられていました。
人間味豊かな塩野史観の面白さも堪能できます。
いつも読み終えると世界が少し違って見えてくるような気になります。
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