■黄柳野高校はなぜこうなってしまったのか
愛知県新城市の黄柳野(つげの)高校(全寮制)の学生寮に喫煙室が設置されていたことが大きな問題になっています。
校長は書類送検されましたが、記者会見で「話し合いで指導しきれなかった。法令違反と認識しているが、このような方法しか考えられなかった」と述べたといいます。
ちなみに、その喫煙室は「禁煙指導室」だったそうです。
こうした発言に対して、喫煙をやめさせる方法が考えられなかったのであれば校長を辞めるべきだったと、テレビではかなり厳しく批判されています。
黄柳野高校設立のことを知った時は感激しました。
協同総合研究所の機関誌で、その経緯を知ったのです。
学校から締め出されて、行き場のない子どもたちを受け入れる全寮の学校を「市民立」でつくろうという、そのプロジェクトは、新しい学校の歴史の始まりを予感させるものでした。
1990年に設立準備委員会が発足し、全国に募金の呼びかけが始まりました。
岸田今日子や永六輔などもチャリティに協力し、予定よりも1年遅れましたが、1995年4月、開校しました。
詳しいことはもう忘れていますが、当時は私にとって、「きのくに子どもの村学園」と並んで、新しい学校のモデルでした。
全寮制で、子どもたちの個性を伸ばしていく教育を目指していたはずです。
しかし、その後、あまり名前を聞くこともなく、いつの間にか忘れてしまっていました。
それがこんな形で話題になるとは、とても残念な話です。
日本の高校がどのくらい荒れているか、それは想像を絶しているようです。
私にも高校の先生をしている友人が何人かいますが、その人たちの話はすさまじいです。
ですから、私はその校長先生をとがめる自信はありません。
それにさまざまなひずみや問題を一身に背負っていたのかもしれません。
もちろん「禁煙指導室」が喫煙室になっていたことは批判されるべきでしょうが、問題はそんなに簡単だったのかどうかです。
すべてを教師の責任にはできませんし、喫煙がすべてではありません。
高校の時に酒や煙草を経験していたと、悪びれることなくテレビで発言しているタレントや有名人こそ、断罪されるべきでしょう。
いやそれ以上に、今も路上喫煙している大人たちだって糾弾すべきです。
酒を飲んで周りに迷惑を与えている大人たちも、私には許しがたい存在です。
学校の現場で、どれほど先生たちは苦労しているか。
それを思うと、事はそう簡単ではないような気がします。
それにしても、市民立の最初の高校が、こういう結果になってしまったことがとても残念です。
喫煙問題の奥にある、もっと大きな問題に目を向けて行かなければいけないような気がします。
私にとってのもう一つの「希望の星」だった、きのくに子どもの村学園のほうはどうなったのでしょうか。
最近、ある人から、ここもちょっとおかしくなっているようだと聞きましたが、本当でしょうか。
どなたか最近訪問した方があれば、印象を教えてくれませんか。
| 固定リンク
「教育時評」カテゴリの記事
- ■NHKスペシャル「学校のみらい」(2024.01.25)
- ■日本の子どもたち(15歳)の精神的幸福度は38か国中37位(2023.06.05)
- ■クイズは楽しいのに入学テストはなぜ楽しくないのか(2022.01.17)
- ■半藤一利さんの最後の著書「戦争というもの」(2021.06.25)
- ■子どもたちはやはり信頼できます(2020.05.10)
コメント
黄柳野高校がこうなってしまった背景には
理念だけが先歩きし、
職員同士の権力争いにより
指導力のある職員がいなくなったことが原因だと思われます。
現在、黄柳野高校の寮で
暴力や盗難など喫煙以外の問題が山積みで
子供たちが安全に暮らせる環境にはありません。
素晴らしい理念でつくられた高校なのに
残念で仕方がありません。
投稿: nana | 2009/04/01 20:33
nana さん
ありがとうございました。
最近の状況を知らないのですが、
もし状況のわかるサイトか情報などあれば、所在を教えてくれませんか。
投稿: 佐藤修 | 2009/04/01 20:47