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2009/01/04

■パイプ効果と景気

今年はデフレで、物価がまた下がりだすといわれています。
物価が下がりだすと、皆さんはどうするでしょうか。
おそらく物を買うのを手控えるでしょう。
ぎりぎりまで買わないほうが得をするからです。
それぞれの家庭在庫は最小限になっていきます。
こういう状況を、日本はここ数年続けてきました。
その流れが変わりだしたのが昨年でした。
原油の先物価格が急上昇したのを理由にして、さまざまなものが値上がりしました。
物価が上がるとなると、みんなできるだけ早く買おうと思い出します。
そこで安いうちに買いだめしようという人が増えてきます。
そういう動きが出ようとしていた矢先の、デフレへの逆戻りです。
デフレからインフレへ、インフレからデフレへ、そうした状況変化が市場をかく乱する度合いは予想以上に大きなものです。

会社時代に繊維の需給構造を解析する仕事をしたことがあります。
その時に、気づいたのが、景気の流れが反転する際に、長い流通段階に在庫されているものが景気の振れを大きく増幅させる現象です。
「パイプ効果」と名づけました。
景気が上昇基調を続けている時には、全く出てこない動きですが、上昇が停滞するだけで、需給構造は大きく変動します。
コロンブスの卵のような話ですが、体験してみないとなかなか実感できません。
当時、そうした論理から減産を提案しましたが、ボスを説得するには至りませんでした。
しかし、その後、減産を余儀なくされたことを思い出します。
もっと自信を持って具申すればよかったと当時思いましたが、初めての体験には人はなかなか自信を持てないものです。

長々と書きましたが、最近の景気の急反落にはこうした現象があります。
それは「成熟社会」における経済の特徴といってもいいでしょう。
自動車会社が需要の落ち込みを過小評価していたことの一因に、こんな簡単な要因があるとは思いにくいでしょうが、評価の間違いの多くは実はこのような簡単なミスの累積なのです。
パイプ効果は、実需が減少する時だけのことではなく、実需回復期にも作動し、実需以上に景気のかく乱要因になるはずですが、意外に見えにくいのです。
特に輸出に依存している商品の場合は、それが見えにくくなります。

これはほんの一つの例ですが、経済は生きていますから、ちょっとした話題や動きが、実体経済を大きく変えていくのです。
まさにバタフライ効果が作動するわけですが、こうしたことを考えると、かつてのような金融政策や財政政策で景気調整しようなどという発想そのものが過去のものではないかと思います。

今朝のテレビ番組で、金子勝さんが、国民に希望を持たせることが大切だとお話していましたが、成熟社会においては、先が見えるということこそが、最大の景気対策ではないかと思います。
あまりにも先が見えなくなってしますし、先を作り出す財界人も政治家もいなくなってしまいました。
まさに金融資本家の思う壺です。

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